未翻訳ブックレビュー

世界の本への窓 by 植田かもめ

黒い大統領の8年のダンス -(前編)カウントダウン・オバマ

Hip Hop Ain't Dead: It's Livin' in the White House (English Edition)

「ヒップホップは死んじゃいない。ホワイトハウスで生きている」(サンフォード・リッチモンド著)(未訳)

 

 

やあみんな、お待ちかね!オバマのゴールデン・ヒッツを振り返る、カウントダウン・オバマの時間だよ!

お相手は僕、DJバリー(Barry)と、

 

 

MCミーシュ(Meesh)よ

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書くことは、失敗すること - Ta-Nehisi Coates on Writing

 

「私のすべての作品において、失敗はおそらくもっとも重要な要素です。」
"Failure is probably the most important factor in all of my work."

 

「書くことは、失敗することだからですー何度も何度も、嫌というほど。」
"Writing is failure. Over and over and over again."

 

正月休みに読んだ「やり抜く力 GRIT(グリット)」(アンジェラ・ダックワース著・神崎 朗子訳)という本の中で紹介されていたTa-Nehisi Coates(タナハシ・コーツ)のコメントが印象的だったので紹介したい。

 

元動画は、ジャーナリストのコーツが米国で「天才賞」と呼ばれるマッカーサー賞を2015年に受賞した際に同賞のwebページにアップされたものだ。別の年にこの賞を受賞したアンジェラ・ダックワースは、「GRIT」の中で「これ以上ないほど的確に、『書く』という仕事について語っている」とこの動画コメントを紹介している。

 

コーツは語りのリズムがとてもパワフルなので、ぜひ動画も一緒に見ていただきたい。冒頭に引用した2つのコメントは動画のいちばん最初に語られる。残りの、以下に引用するコメントは動画の後半で語られるが、該当箇所(2分32秒あたり)からスタートするリンクも貼っておく。

 

なお、翻訳は同「GRIT」の日本語版から引用した。コーツのコメントがどこでどう紹介されているかは同書をぜひ読んでいただければと思う。

 

ではどうぞ。

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2016年の未翻訳ブックレビュー

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2016年はだいたい月に1冊ぐらいのペースで本を紹介してきたので、月別のまとめを作った。個人的な好奇心の航行記録。達成も未達もない営業月報。取り上げた本の日本語版が出たかの情報も付記した(2016年12月時点)。

 

ひとつ前にアップしたまとめ記事とかぶっている記述も幾つかあったりするが、かぶっているのはオススメ度が高いもの。

 

2015年の夏に始めたこのブログだけど、今年は編集者の小田明志さんに拾ってもらったり*1、エトガル・ケレットの翻訳者の秋元孝文さんに紹介してもらったり*2など、何かを作ったり書いたりしている人から言及してもらえたことがとても嬉しかった。

 

年内の更新はこれでおわり。読んでくれた皆様ありがとうございます。まだまだ取り上げたい本は多いので、更新頻度は低いだろうし記事はどれも長いだろうけれど来年もたまにアクセスしてみてください。まだ他には出てない情報が書いてある予定。

 

では2016年のまとめです。最も忙しい人は2月だけ、もう少し余裕がある人は2、5、1月をどうぞ(管理人が自分で好きな記事順)。

 

2016年月別まとめ目次

  • 1月:他の動物と人間の一番の違いは?
  • 2月:スマホは恋愛をどう変えた?
  • 3月:白人はアメリカで少数派になる?
  • 4月:シンプルな説明、あとモラル
  • 5月:笑いがなければこの世は闇
  • 6月:今のインターネットはひどい(1)
  • 7月:今のインターネットはひどい(2)
  • 8月:今のインターネットはひどい(3)
  • 9月:成長するってこと
  • 10月:そして神になる
  • 11月: 私たちの歴史。の私たちって誰?
  • 12月: 憎しみと笑い
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俺のグラミー/アカデミー/ピュリッツァー賞2016



去年も書いた、年に一度の自己満足の祭典。
2016年に気に入った音楽と映画と本を紹介する。

 

今年はあんまり厳選しないで、ぶわーっといっぱい作品を並べてみる。音楽が10作、映画が7作、本が20冊ある。ページを分けた方がいいのかもしれないけれど、ASKAのブログみたいに長くてなんか禍々しい記事を作ってみたかった気もするのでそのままにしておく。

 

自分にとって音楽や映画や本ってカレンダーや日記みたいなもので、「あの仕事をしていた頃にこの音楽よく聞いていたな」とか「あの人とあのレストラン行った帰りにこの映画見たな」とか「あの飲み会なじめなくて二次会行かずに帰ってこの本読んで寝たな」とかの記憶とセットになっている。

 

なので、この下にいっぱい並べるリンクは、将来の自分にたどらせる記憶のパンくずであり、連想ゲームのヒントであり、歳月に貼った付箋である。デスクやモニターに貼られた付箋と同じで、他人が見ても何のメモかよくわからないかもしれないが自分には重要なアイテム。

 

ではどうぞ。

なお、それぞれ連番を振っているけれど、特に順位とかを意味しているわけでない。

目次

  • 俺のグラミー賞
  • 俺のアカデミー賞 
  • 俺のピュリッツァー賞

 

 

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カタルシスより笑い - エトガル・ケレット未訳短編集

The Bus Driver Who Wanted to Be God & Other StoriesMissing Kissinger

The Nimrod Flipout: StoriesThe Girl on the Fridge: Stories 

 

「あんたらが任務にあたるとき、天国で70人のエロい処女が待っていると教えられるってホント?」

 

「ホントだよ」ナッサーは言った。「それで実際に俺が手にしたものを見てみろよ。ぬるいウォッカだ。」

 

自殺した人間だけが行き着く世界のとあるバーで、自爆テロ犯がそんな風に愚痴を言う。エトガル・ケレットの連作短編"Kneller's Happy Campers"のワンシーンである。同作は「リストカッターズ」というタイトルで、日本未公開だけど映画化もされている。

 

今年(2016年)日本語版が発売された「あの素晴らしき七年」というエッセイ集を読んだのがきっかけで、このイスラエル作家にハマった。5月に複数の記事を書いてほめまくったけれど、過去作を全部読み終えたので、この記事では再び彼を紹介する。

 

目次

  • エトガル・ケレット一日一話
  • スッキリしないし美化もしない
  • 笑いの花
  • 訳してみたよ
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憎んでいるのでなく憎まされている

The Attention Merchants: The Epic Scramble to Get Inside Our Heads

 

The Attention Merchants by Tim Wu

 

'Post-truth'(ポスト真実、脱真実、ガセネタ)がオックスフォード辞典のワード・オブ・ザ・イヤー2016に選ばれた話や、WELQなどキュレーションメディアが非公開化した騒動を見ていると、PV数に応じて広告料収入を分配するインターネットのモデルってまだまだ改善途上なのだなと思う。

 

以前の記事で紹介した'I Hate the Internet'という小説の中に次のようなくだりがある。

 

人種差別は21世紀の有益な製品だ。なぜならばより多くの広告をもたらすから。そして、人種差別への反抗も有益な製品だ。やはり多くの広告をもたらすのだから。

 

2016年の今年、フェイスブックのリアクションボタンが「いいね」から「ひどいね」や「悲しいね」などに拡張された。これって、賛意から怒りや悲しみへの「販路拡大」なのだと思う。お金に色はないという言い方があるけれど、PV数にも(今のところ)色はない。クリーンでもダーティーでも、アテンションを集めればそれを広告主に売れる。

 

目次

  • 広告付きの学校
  • ジョージア(グルジア)のフェイクニュース工場
  • ジャンクフード化する無料コンテンツ
  • 過去記事紹介:憎しみ3部作
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俺にはわかる - I Know Better by John Legend

Darkness & Light

 

2016年12月に発表されたジョン・レジェンドのアルバム"Darkness And Light"(闇と光)より、"I Know Better"の対訳です。

前の記事で紹介したラインナップにも加えたい一作。上に貼った公式動画で曲は聴けます。元詞はラプジより。

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