ミチコ・カクタニと、ルー・リードの、テジュ・コールのニューヨーク
目次
- ミチコ・カクタニについて
- イントロ訳:ルー・リードへの追悼文
- イントロ訳:テジュ・コール「オープン・シティ」のレビュー
- おわりに
ミチコ・カクタニについて
Michiko Kakutaniという人がいる。日系2世の米国人である彼女は、おそらく英語圏では世界一有名な書評家のひとりだ。1998年にピュリッツァー賞の批評部門を受賞し、2017年の1月には退任を間近に控えたバラック・オバマへインタビューを行い大統領に読書遍歴(と作家としての遍歴!)を尋ねている。
その彼女が、40年近くに渡り務めたニューヨークタイムズの書評担当チーフを2017年7月で退任することが先月発表された。幾つものWebメディアがこれをニュースとして取り上げている。Vanity Fair誌は辛口で知られる伝説的な批評家の退任を「世界の作家たちは今夜はより安心して眠れるだろう」と伝えた。
続きを読むジョブスがいればiPhoneが生まれるか - The One Device by Brian Merchant
The One Device: The Secret History of the iPhone
スマホかセックス、あきらめるならどちらにするか?
米国のIT企業Delvvが「3ヶ月スマホを使えないのと同じ期間セックスができないのとどちらを選ぶか」を18歳以上の男女に尋ねたところ、約3割がセックスをしない方を選ぶと答えた。
続きを読むゆるふわギャングと好奇心
書評じゃない番外記事。
"Escape To The Paradise"という曲を聴いて以来、ゆるふわギャングが好きだ。おっさん向け音楽雑誌とかにありそうな言い回しをすると、これって「2017年の'ナイトクルージング'」なんじゃないかと思う。
続きを読むドイツ映画「ありがとう、トニ・エルドマン」が描くグローバルビジネスというサブカルチャー。そして、ラストダンスは私に
2017年のアカデミー外国語映画賞にもノミネートされたドイツ映画「ありがとう、トニ・エルドマン」がめちゃくちゃ良かった。
簡単にあらすじを説明すると、グローバル企業でキャリアを重ね故郷のドイツを離れてルーマニアで働く娘のイネスの職場に、イタズラ好きな性格の父が予告もなく尋ねてくる。一度は追い返されるが、謎のカツラと入れ歯で変装した父は「トニ・エルドマン」と名乗ってイネスが行くところに神出鬼没で現れる・・
本作の中心にはユーモアと親子の愛があって、映画館で何度も声を出して笑ったし、泣きもした。親父ギャグのウザさも、子を想う父の愛も万国共通だ。ただ、この記事ではユーモアにも親子愛にも触れない。この映画には単なる父と娘の人情ストーリーに留まらない多層的な広がりがあって、そっちを語りたい。
具体的には、この映画のグローバル・ビジネスの描き方のリアルさと、人生で何に時間を使うべきかという本作のテーマについてである。ではどうぞ。
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- グローバルビジネスという「サブカルチャー」
- 現代人の裁断された時間
- 自分にとってのラストダンス
想像力は無限ではない? ファスト&スローを書かせた理論と友情 - The Undoing Project by Michael Lewis
2017/01/22 初出
2017/07/07 日本語版発売につき更新
マイケル・ルイス「かくて行動経済学は生まれり」として2017/7/14発売
The Undoing Project: A Friendship that Changed the World
ある男がいたとする。彼は90歳近い高齢で、癌が全身に転移している。助かる見込はないと考えた医師と家族は手術などの措置を断念しており、既に意識がはっきりしない状態にある。さて、次のどちらが起こる可能性がより高いだろう。
(A)彼は1週間以内に亡くなる
(B)彼は1年以内に亡くなる
Aと思ってしまうかもしれないが、「どちらが起こる可能性がより高いか」という質問なら、彼の病状にかかわりなく答えはBになる。1週間以内に亡くなる確率は1年以内に亡くなる確率の一部で、ベン図にするとAの事象はすっぽりとBの事象に収まるからだ。でも、直感ではAが正しいように思える。
これは「連言錯誤」(Conjunction Fallacy)と呼ばれる認知バイアスのひとつ。この例はもしかすると「問題の出し方が悪い」とかツッコミを入れられるかもしれないけれど、特徴的な言葉がストーリーとして並んでいると、人間はそれに引っぱられて基本的なロジックを無視してしまう。
「マネー・ボール」などの著作があるマイケル・ルイスによる本書"The Undoing Project"は、こうした認知バイアス研究の先駆者であるイスラエル出身の心理学者ダニエル・カーネマンとエイモス・トヴェルスキーの評伝だ。
続きを読む【取材協力しました】サイゾー17年7月号「日本の"裏"を知る本100冊」
お知らせです。
月刊サイゾー7月号の特集「日本の"裏"を知る本100冊」内の「ハリウッドで『原作改変』が横行する理由」という記事に取材協力しました。
「映画化間近な未翻訳小説」というお題の取材に答えて6冊ほどコメント付きで選書したものを、1ページのコラムにまとめていただいています。
紙版の他、KindleやKindle Unlimited、dマガジンでも読めるはずなので是非ご覧ください。6月19日発売です。Webでも一部無料で読めます。
同誌で長年連載をしている映画評論家の町山智浩さんを大尊敬しているので、同じ雑誌に関与できて嬉しかったです。あと、このブログでも紹介済の本については以下に過去記事リンクを貼っておきます。
*2017.07.17:リンク追加("American War" を新たに記事にした)
・・ところで、同誌にコーネリアス小山田圭吾のインタビューが載っていて、息子がもう高校生と知ってビビりました。父親は息子からドレイクのpassionfruitを教えてもらったりしているそうな。。
サイゾー2017年7月号【ヤバい本100冊・三代目JSB EXILEと春樹・コーネリアス小山田圭吾】
- 出版社/メーカー: サイゾー
- 発売日: 2017/06/19
- メディア: 雑誌
- この商品を含むブログ (1件) を見る
Cornelius - 『あなたがいるなら』"If You're Here"
AIは人間に興味がない - To Be a Machine by Marc O'Connell
「人間は最適化されていないシステム(suboptimal system)だ」
身体のサイボーグ化、脳の冷凍保存、意識のアップロード・・本書「To Be a Machine」で、作家・コラムニストのマーク・オコンネルはトランス・ヒューマズム(超人間主義)と呼ばれるムーブメントの推進人物たちを訪ねる。
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