逃げれば過去とも向き合える - The Glass Castle by Jeanette Walls
Jeanette Walls - The Glass Castle
ニューヨークで芸能系ニュースの記者・編集者として働くジャネット・ウォールズは、ある女性がゴミ箱を漁っているのを見つける。それは彼女の母親だった・・
両親との思い出と葛藤を綴った自伝的ノンフィクションを入り口に、何かから「逃げてもよいとき」についてこの記事では考えてみる。
続きを読むセンス・オブ・ワンダーの最新地図 - A New Map of Wonders by Casper Henderson
「アップルパイを作りたいなら、まずは宇宙を創造しないと」(カール・セーガン)
"If you want to make an apple pie, said the astronomer Carl Sagan, you must first invent the universe. "
何かに驚いて感動する。そんな「センス・オブ・ワンダー」を体験することは純粋に楽しい。でもそれだけじゃない。宇宙や自然など、自分以上の何かの存在を感じることは人を謙虚にさせる。本書"A New Map of Wonders: A Journey in Search of Modern Marvels"は、世界ふしぎ発見!のための新しい地図だ。作家・ジャーナリストである著者のCasper Herderson(カスパー・アンダーソン)が、哲学・歴史・宗教・自然科学・テクノロジーを行き来しながら現代の驚異を旅する、人文・自然科学エッセイである。
続きを読むワインが好きなふりをしなくてよい理由 - The Wine Lover's Daughter by Anne Fardiman
オーガズムに達したふりをする女性のように、自分はワインに満足していると装ってきた。
エッセイストのアン・ファディマンはそう語る。本書"The Wine Lover's Daughter"(ワイン愛好家の娘)は、彼女の父との思い出の記録である。そして同時に、偏見やコンプレックスから科学で自由になる本でもある。食という文化にまつわるヒエラルキー、つまり「この味がわかる人はわからない人より格上」といった階級意識からの解放である。
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一般向け機械学習本の決定版 - The Master Algorithm by Pedro Domingos
Pedro Domingos - The Master Algorithm
このブログで何回も名前を出しているユヴァル・ノア・ハラリ「ホモ・デウス」は、人間の全ての活動はアルゴリズムにいずれ置き換え可能だろうと説く本だった。
ハラリはさらにそれを歴史の文脈に位置付ける。神が中心の時代から、神を解体して生まれた人間中心主義の時代があり(←いまココ)、人間を解体する「データ主義」の時代がやがて来るだろうと。簡単に表にすると以下の通り。
神中心 |
人間は神の創造の産物に過ぎない |
人間主義 |
神は人間の想像の産物に過ぎない |
データ主義 |
人間の想像もアルゴリズムの産物に過ぎない |
ハラリの見立ては挑発的でめちゃくちゃ面白いのだけど、ひとつ腑に落ちない点もあった。じゃあ人間を置きかえるアルゴリズムって具体的に何?というのが全く不明なのだ。アルゴリズム=「物事を処理する手順、方法」と定義してしまえば、そりゃ全宇宙の営みがアルゴリズムの産物だろう。
そこで読んだのが本書、
The Master Algorithm: How the Quest for the Ultimate Learning Machine Will Remake Our World(マスター・アルゴリズム:究極の学習マシーンはいかに世界を再構築するか)
である。
ワシントン大の教授で機械学習の専門家である著者のペドロ・ドミンゴスが本書で探求するのは、どんな目的にでも適用できる究極のアルゴリズムだ。それが存在するなら「過去、現在、未来についてのあらゆる知識を、データから導き出す」ことができる、というのが本書の中心仮説である。
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