未翻訳ブックレビュー

世界の本への窓 by 植田かもめ

自分を大きく見せるためじゃない自分語り - 「悲しくてかっこいい人」 by イ・ラン

悲しくてかっこいい人

イ・ラン(Lang Lee) - 悲しくてかっこいい人

 

韓国の自由で気高い魂、

シンガーソングライターのイ・ランのエッセイ集。

 

セカンドアルバムの「神様ごっこ」(名作!)を聴いて以来、彼女の表現世界がとても好きで、ミランダ・ジュライと並べた記事を以前に書いたりした↓ 

続きを読む

【いいウソ、あります】エトガル・ケレットのドキュメンタリー「ホントの話」

 

日本での劇場公開や動画配信は未定。でもめちゃくちゃ面白かったドキュメンタリー「エトガル・ケレット ホントの話」(Etgar Keret - Based on a true story)を紹介したい。

 

先に言いたいことを書いておくとこんな感じ。世の中には「悪いウソ」を使うのが上手い人が多い。それはファクトを無視して人気を得る政治家だったり、差別的な情報を捏造する人だったり。そんな「悪いウソ」に対して、学者やジャーナリストたちは「真実」で闘うのだと思う。でも、作家やアーティストは「良いウソ」で闘うのではないだろうか。

 

目次 

  • エトガル・ケレット「ホントの話」日本初上映
  • 人はなぜ物語る
  • 良い作家とは
  • おまけ
続きを読む

【寄稿連載更新】マイケル・ルイスの新作はトランプ政権について

The Fifth Risk (English Edition)

 

タトル・モリエイジェンシーさんが世界の本棚からお薦めを紹介する「翻訳書ときどき洋書」への寄稿連載、更新しました。

 

手前ミソですが、これは良く書けた回だと思うので、ぜひご覧ください↓

 

続きを読む

【ブックガイド】ユヴァル・ノア・ハラリと行く12冊の人類観察ツアー

 

 

小ネタ記事。

 

「サピエンス全史」「ホモ・デウス」のユヴァル・ノア・ハラリが、ツイッターにオススメ本リストを投稿していたので以下にまとめてみた。

 

詳細は不明なのだが、どうやらこれはApple Books*1とのタイアップ企画らしい。

 

タイトルは、

"A Haphazard Guided Tour of Humanity on the Brink"

と名付けられている。

 

旅行会社のツアーの名前みたいに訳すならば、

「歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリさんと行く! がけっぷち人類気まぐれガイドツアー」

という感じだろうか。絶滅危惧種のホモ・サピエンスに会いに行く本の旅である。ニューエリートの皆さんも、オールド大衆の皆さんも、がけっぷち人類の同胞として、ウェルカム・オン・ボード。

*1:iOS12以降のiBooksの後継アプリ。エディターや批評家によるコレクション(Apple Musicでいうところのプレイリスト)がけっこう充実している印象。とはいえ、Amazon Musicで音楽を聞いている人が少なそうなのと同じように、Apple Booksで電子書籍を読んでいる人も少なそうなので、記事にはアマゾンのリンクを貼った

続きを読む

ジュノ・ディアスとMeToo - その3 - ボストン・レビューの声明文の和訳

オスカー・ワオの短く凄まじい人生 (新潮クレスト・ブックス)

前の記事↑からの続き。

 

ピュリッツァー賞作家ジュノ・ディアスのパワハラ・セクハラ疑惑(経緯は前の記事参照)に際して、政治・文化メディアのBoston ReviewがWeb上に発表した声明文を以下に勝手に訳す。

続きを読む