未翻訳ブックレビュー

世界の本への窓 by 植田かもめ

BUSINESS & SOCIETY

数字を見たらとにかく割ろう - "Factfulness"の教えの具体例

以下の連載で紹介したハンス・ロスリング著"Factfulness"(ファクトフルネス)に関するスピンオフ記事。

ハイテンション!統計実況おじさん〜寄稿連載更新

お知らせです。 「翻訳書ときどき洋書」内の寄稿連載更新しました! note.mu 統計をエンタメに変えた男、ことハンス・ロスリングの本を紹介しています。 ぜひどうぞ。

霞が関の中心でデジタル独裁を叫んだ会長

叫んではいないだろうけれど、経済同友会の会長は「サピエンス全史」のユヴァル・ノア・ハラリがお好きなようだ。 ハラリが2018年1月のダボス会議で語ったDigital Dictatorship(デジタル独裁)という概念を、三菱ケミカルの会長でもある小林喜光氏が国交省…

なんかもう当たり前みたいになってるけど、Facebookのデータと広告だけで人の行動を変えられるのすごくないか

この記事はケンブリッジ・アナリティカ事件への雑感。 上にリンクした英ガーディアンの記事と、昨年2017年に私的ベストに挙げた”Everybody Lies”(日本語版「誰もが嘘をついている」発売中)という本を材料にして考える。 言いたいことはタイトルの通り。こ…

「ちょっとしたことでうまくいく」と、個人的な英語習得経験

当たり前を言語化して学ぶことの価値について。 読書猿さんの以下ツイートで知った本を入口にして考える。 こうした、当たり前過ぎて我々が言語化していない行動について、改めて丁寧にできるように解説してある書物は、重要だし役に立ちますね。 https://t.…

みんな嘘つき - 検索データの新科学

2017/09/18 初出 2018/02/09 日本語版発売につき更新「誰もが嘘をついている ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性」→2017年のベストにも挙げた本なのでご一読を。 人に言えない秘密でも、グーグルになら言えるはず。 本書"Everybody Lies: Big Data, New…

理性は誤解されている - The Enigma of Reason by Hugo Mercier, Dan Sperber

人間は”予想通りに不合理”に行動する。 でも、なぜ? ともにフランスの認知科学者であるユーゴ・メルシエとダン・スペルベルは、本書"The Enigma of Reason"(理性の謎)で、人間の理性とは何かを見直す。 まだ2月だけど2018年ベストの一つに選ぶだろう本。

失敗していいよと言ってくれる会社 - An Everyone Culture by Robert Kegan and Lisa Laskow Lahey

An Everyone Culture: Becoming a Deliberately Developmental Organization 2016/09/11 初出 2017/09/01 日本語版発売につき更新 ロバート・キーガン、 リサ・ラスコウ・レイヒー「なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか 」として2017/8/7発売 組織に属する多…

ジョブスがいればiPhoneが生まれるか - The One Device by Brian Merchant

The One Device: The Secret History of the iPhone スマホかセックス、あきらめるならどちらにするか? 米国のIT企業Delvvが「3ヶ月スマホを使えないのと同じ期間セックスができないのとどちらを選ぶか」を18歳以上の男女に尋ねたところ、約3割がセックスを…

ドイツ映画「ありがとう、トニ・エルドマン」が描くグローバルビジネスというサブカルチャー。そして、ラストダンスは私に

【予告編】映画『ありがとう、トニ・エルドマン』 2017年のアカデミー外国語映画賞にもノミネートされたドイツ映画「ありがとう、トニ・エルドマン」がめちゃくちゃ良かった。 簡単にあらすじを説明すると、グローバル企業でキャリアを重ね故郷のドイツを離…

想像力は無限ではない? ファスト&スローを書かせた理論と友情 - The Undoing Project by Michael Lewis

2017/01/22 初出 2017/07/07 日本語版発売につき更新 マイケル・ルイス「かくて行動経済学は生まれり」として2017/7/14発売 The Undoing Project: A Friendship that Changed the World ある男がいたとする。彼は90歳近い高齢で、癌が全身に転移している。助…

現代ほど辞書が読まれるべき時代は無い

Shooting an Elephant: And Other Essays by George Orwell (Penguin Modern Classics) 小ネタ記事。 言いたいことはタイトルの通り。 最近よく読んでいるBook Riotというサイトで、ジョージ・オーウェルのエッセイを引用しながら「ポスト真実」時代の辞書の…

データが正義を殺すとき。'数学'破壊兵器とは - Weapons of Math Destruction by Cathy O'Neil

2018/5/9 追記 寄稿連載「植田かもめの『いま世界にいる本たち』」でも本書を取り上げました! 翻訳版「あなたを支配し、社会を破壊する、AI・ビッグデータの罠」が2018/6/13に発売! Weapons of Math Destruction: How Big Data Increases Inequality and T…

ぼくのかんがえた2030年 - 日本と欧州がイスラム圏に加わって米露中と対峙する日

書評とあんまり関係ない、ただの思いつきのネタ。 'ちきりんの日記'の「日本はムスリム・フレンドリーな国になって留学生や観光客を引きつけるべき」という主旨の連載記事を読んで思ったのだけど、 最近のトランプ政権の、ロシアとエネルギー生産国ブロック…

ビッグ・ミー、そしてモラルへの暗い道 - The Road to Character by David Brooks

2016/04/17 初出 2017/01/19 日本語版発売につき更新 デイヴィッド・ブルックス「あなたの人生の意味―先人に学ぶ「惜しまれる生き方」として発売 (先人を偲ぶこの本では絶対に取り上げられないであろう大統領が就任する日の4日後の2017/01/24に発売) David…

憎んでいるのでなく憎まされている

The Attention Merchants by Tim Wu 'Post-truth'(ポスト真実、脱真実、ガセネタ)がオックスフォード辞典のワード・オブ・ザ・イヤー2016に選ばれた話や、WELQなどキュレーションメディアが非公開化した騒動を見ていると、PV数に応じて広告料収入を分配す…

見えないアメリカをめぐる400年 - White Trash by Nancy Isenberg

White Trash: The 400-Year Untold History of Class in America(ホワイト・トラッシュ:アメリカの語られざる階級の400年の歴史) ドナルド・トランプが大統領選挙に勝利した。このブログでは、人口に占める白人割合の低下を背景とする、共和党の長期的な…

【番外】アル・ジャジーラのアジアドキュメンタリー'101 EAST'が面白い

書評と関係ない番外記事。 最近いちばん更新が楽しみなコンテンツの紹介。 リッチな中国人移民がバンクーバーの家賃を引き上げている、フィリピンの指名手配犯には賞金が懸けられている、韓国人は世界一の酒飲みでロシア人の2倍の量飲酒する・・ アル・ジャ…

インターネットだいっきらい - I Hate the Internet by Jarett Kobek

I Hate the Internet by Jarett Kobek もしカート・ヴォネガットがはてな匿名ダイアリーを書き殴ったとしたら。そんな小説が本書'I Hate the Internet'である。 トラルファマドール星人やボコノン教は出てこないけれど、かわりに、マーク・ザッカーバーグも…

「ブロックチェーンは'93年のインターネットと同じ状況にある」- Blockchain Revolution by Don Tapscott

2016/07/19 初出 2016/12/25 日本語版発売につき更新 *ドン・タプスコット「ブロックチェーン・レボリューション ―ビットコインを支える技術はどのようにビジネスと経済、そして世界を変えるのか」として発売 Blockchain Revolution: How the Technology Be…

ヒトになった猿は神へと進化する - Sapiens: A Brief History of Humankind by Yuval Noah Harari

2016/01/24 初出 2016/07/05 日本語版発売につき更新 *ユヴァル・ノア・ハラリ「サピエンス全史」として2016/09/08発売 Sapiens: A Brief History of Humankind 作者: Yuval Noah Harari ジャレド・ダイアモンドの「銃・病原菌・鉄」を超える本、と煽られて…

グーグル・バスに石を投げる - Throwing Rocks at the Google Bus by Douglas Rushkoff

Throwing Rocks at the Google Bus: How Growth Became the Enemy of Prosperity 要約 企業の成長(growth)と人間の繁栄(prosperity)とが一致しない状態を「成長の罠」と呼ぶ UberやAirbnbなどの独占型プラットフォームはシェアビジネスじゃなくて単なる…

トランプが大統領になれない構造的な理由 - 2016 and Beyond by Whit Ayres

2016/11/9 追記:トランプ勝っちゃいました。3月に書いた以下の記事はそのまま残しておきます。 Whit Ayres “2016 and Beyond: How Republicans Can Elect a President in the New America” ドナルド・トランプは共和党指名を獲得できても大統領選には勝てな…

もっといい人いるかも症候群 - Modern Romance by Aziz Ansari

2016/02/11 初出 2016/08/26 アジズ・アンサリ「当世出会い事情―スマホ時代の恋愛社会学」として日本語版発売 Aziz Ansari and Eric Klinenberg "Modern Romance" 2005年から2012年にアメリカで結婚したカップルのうち、3分の1はオンライン上で知り合ってい…

宇宙人に人類史を教えるための7+1冊:Sapiensから広げるブックリスト

ひとつ前にアップした記事↑の関連エントリ。 ユヴァル・ノア・ハラリの「サピエンス」は、取るに足らないチンパンジーの一種だった人間が地球の支配者になれた要因は何だったのかを語る本だ。生物進化や経済やテクノロジーなど広範な領域について言及するこ…

(犯罪の)未来は今 - Future Crimes by Marc Goodman

たとえば家に空き巣に入られるのと、アップル/グーグル/アマゾン/フェイスブック/ツイッターのアカウントを全て乗っ取られるのはどちらが嫌だろうか。サンフランシスコ在住のマット・ホーナンは、後者に近い事態を経験した。・・・IoT(モノのインターネット…

宇宙、エネルギー、ハードワーク - Elon Musk by Ashlee Vance

2015.07.30 初出 2015.09.23 日本語版発売につき更新(小噺追記)この先の数十年で何冊出るかわからないイーロン・マスクについての本のうち、最初の包括的な一冊。ジャーナリストのAshlee Vanceが本人の協力を得て著した評伝"Elon Musk"は、そう呼べる本だ…