新潮社「Foresight」での連載「未翻訳本から読む世界」、更新されています。
*Yahooでの記事単品売り
今回は特別編として、2021年に日本語版が発売された注目本と、今後の翻訳が期待される本をまとめて紹介しました。
5000字以上使って、関連書籍の言及まで含めると約20冊の紹介をぶちこんでいます。ブックリストの爆弾、またはぎゅうぎゅう焼きです。
手前みそですが、未翻訳の本を日本語で一気にまとめてこんなに紹介しているお腹いっぱいな記事は他に無いと思います(・・と言いたいところですが、yomoyomoさんが毎年公開している『邦訳の刊行が期待される洋書を紹介しまくることにする』などがあります。)
今年を振り返ると、約3年に渡って連載を続けさせてもらったタトル・モリエイジェンシーさんの「翻訳書ときどき洋書」が定期更新終了になり、夏から新たに新潮社さんの「Foresight」で連載が開始になりました。縁に感謝です。
*「翻訳書ときどき洋書」の過去連載は今でも無料で読めます
*新潮社「Foresight」は有料メディアですが、連載初回は無料で公開されています。2021年12月に日本語版も出たダニエル・カーネマン他の「NOISE」を紹介した回です
寄稿連載ではほとんどの回でノンフィクションを紹介していて、個人的にもフィクションを読む量が年々減りつつあるのですが、前の記事で紹介したチャン・リュジンの『仕事の喜びと哀しみ』とか、アガサ・クリスティーの『春にして君を離れ』とかは良かったです。マンガだと和山やま『夢中さ、きみに』とか池辺葵『ブランチライン』とかを好きになりました。『チ。地球の運動について』も相変わらず面白いです。あと、そのうち記事にするかもですがサッカーマンガの『アオアシ』を完全にキャリアとビジネスについてのマンガという観点で読んでいます。
また、再編集アンソロジーが出たのをきっかけに向田邦子のエッセイを読み直して感動しました。
とてもいい文章を読んだ。『この社会には「人並みの幸せ」なんてものは無く、ましてや「女の幸せ」なんてものも存在せず、「私の幸せ」以外にはあり得ない』/向田邦子がビヨンセすぎて人生に前向きになれそうだ https://t.co/YHF0G6zS5r pic.twitter.com/wzVywI1wW2
— 佐々木俊尚 (@sasakitoshinao) May 2, 2021
2021年のベスト本
改めて今年の1冊を選ぶなら、連載に詳しく書きましたがビル・ゲイツの『地球の未来のため僕が決断したこと 気候大災害は防げる』(原題はHow to Avoid a Climate Disaster)です。とにかく近年の欧米の社会経済ノンフィクションは何のテーマであっても何かしら気候変動について言及するのがデフォルトになっているという印象なのですが、入門編の一冊として最適です。なんだかふわっとした日本語タイトルにだまされてはいけません。
次点は、ウォルター・アイザックソンがCRISPRの生みの親ジェニファー・ダウドナの半生を描きつつパンデミックとmRNAワクチンの仕組みも解説してくれる傑作ノンフィクション『The Code Breaker』と、もう一冊、ユニリーバの元CEOポール・ポルマンによる『Net Positive』です。「サステナビリティとみんな言うけれど、差し引きゼロ(ネット・ゼロ)なだけじゃビジネスとしてホントにサステナブルではないから、成長をあきらめないネット・ポジティブを目指すべき」と語る一冊です。
毎年思っていますが、本って多いです。読書は手軽に自己満足感を得られる手段ですが、クリティカルマスを超えるとその自己満足を誰かが「教養」と呼んでくれたりするのかもしれません。来年も新しくて面白い本を紹介したいと思います。
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