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未翻訳ブックレビュー

Lost In Bookish Rambles. 日本語版発売を待たずに本を紹介するページです

未来が見える未訳本カタログ2017

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約1年振りに、今後ブログで取り上げるかもしれない未訳本をまとめて紹介する。

 

まず前置きから。

何年も前からこういうリストを恒例で作っていたyomoyomoさんが今年からブログを更新停止してしまったけれど、このシリーズは今年も書いてくれていた。

 

 

この記事の元祖というか本家というかパイセンであり、管理人にとっても大変貴重な情報源なので上の記事もぜひ併せてどうぞ。どちらもかなり詰め込んでいるけど選書はかぶらない。本って多い。ワーキング・マザーに向けて書かれた"A Uterus Is a Feature, Not a Bug"(子宮は機能であってバグじゃない)とかすごいタイトルだなあ。

 

さて、去年も書いたけれど、これは「世の中の面白い本が全て日本語に翻訳されるわけではない」という当たり前の事実を知るためのカタログである。

 

世界人口の約1.7%の人間しか使っていない*1日本語という言語で世界中の面白い本がそれでもけっこう手に入っている現状は、ホントはとても例外的な時代なのかもしれない(翻訳者はもっと感謝されていい)。

 

その一方で、上に書いたことと相矛盾するけど、もし自動翻訳技術が発達したら、電子書籍で洋書を購入して一瞬で日本語に変換できる、しかも「平易な日本語への翻訳」「村上春樹調での翻訳」とかをワンクリックで切り替えられる時代がいずれ来るかもしれない。そうすればここに挙げるような本も時差なく日本語で読める。

 

紹介する本はFiction & Art、Business & Society、Science & Technologyという分類で各5冊あるけど、特別枠として「サピエンス全史」の続編「ホモ・デウス」を最初に紹介する。さらに最後に「その他実用書」という分類で料理本を1冊紹介する。

 

以上、長い前置きおわり。

以下、長い本編はじまり。

ではどうぞ。

 

目次

 

ハラリ「ホモ・デウス」煽り文案

既にこのブログでレビュー済だけど、「未来が見える未訳本」(頭韻踏んでみた) というコンセプトにぴったりな本なので再度紹介したい。イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリによる、日本でも売れた世界的ベストセラー「サピエンス全史」の続編「ホモ・デウス」である。

 

Homo Deus: A Brief History of Tomorrow

Homo Deus: A Brief History of Tomorrow

 

 

これはホントにすごい本で、「民主主義もヒューマニズムも終わる」という論に説得されそうになるなんて初めての体験だった。詳細は過去記事に書いたので、ここではこの本を煽るコピー文案を勝手に考えてみた*2。本の帯文や書店のポップ、または任意の著名人の推薦コメントをイメージしていただきたい。

 

ホモ・デウス煽り文案

「サピエンス全史」は長い長い前書きに過ぎなかった・・

ヒトの時代は終わりました。神(デウス)の時代の始まりです

AIに仕事を奪われるのが恐い?だったらこの本を読めばよい。そんなことは、これから起こる変化のほんの一部だと分かるから

いまから数百年後、現生人類は笑われているだろう。この程度で"ホモ・サピエンス"(賢いヒト)と名乗っていたなんて、どれだけ愚かだったのだろうと

人工知能は人間を超えるか?イエス。

人工知能は意識を持つか?ノー。

ハラリは言う。知性は必須だが、意識はオプションに過ぎない・・

 

・・詳細が気になる方は以下の過去記事をぜひどうぞ。

 

 

それもめんどくさい人はハラリ本人が2分で人類の未来を語るBBCのアニメ動画があるのでどうぞ。

 

 

・・ホモ・デウス煽りおわり。ここからはジャンル別に紹介。

 

Fiction & Art

American War (English Edition)

American War (English Edition)

 

2074年、第二次南北戦争勃発。

中国とイスラムが2大勢力の世界で、没落したアメリカでは大統領が石油の使用禁止令を出す。6歳の少女サラ・チェスナットは父を殺され、身寄りを失った人間が行き着く避難キャンプで育つ。自らを戦争の道具に変えながら。

無垢な少女をテロリストに変えるディストピアとは。ジャーナリストのオマー・エル・アカドのデビュー小説。

 

The Answers

The Answers

 

男に恋愛工学なんて分かるわけがない。 

メアリーが始めたアルバイト「ザ・ガールフレンド・エクスペリメント」は、有名な俳優が愛とは何かを要素分解して科学的に分析するために始めたプロジェクトだった。メアリーは「エモーショナル・ガールフレンド」として採用され、マターナル・ガールフレンド(母親彼女)、マンデイン・ガールフレンド(平凡な彼女)、アングリー・ガールフレンド(怒る彼女)らとともに「親密な愛情チーム」に配属される。

若手女性作家が描く、愛という名の未発見物質についての探査報告書。

 

First Person

First Person

 

「グールド魚類画帖」のリチャード・フラナガン新作。

「フィクションがリアリティとして提示されてしまう時代に、嘘とは何か、フィクションとは何かを小説を通して考えたい」*3そう語るフラナガンが、オーストラリアの有名な投資詐欺師の自伝をゴーストライトした若手時代の自身の経験から着想を得た物語。発売はだいぶ先で2017年11月の予定。

 

Agency

Agency

 

ウイリアム・ギブソン新作。

ヒラリー・クリントンが大統領選挙に勝利した2017年のサンフランシスコで、あるスタートアップ企業が"cross-platform personal avatar"と呼ばれるAI技術をテストする。しかしそこに、人口の80%以上が死滅した22世紀のロンドンからの使者が介入してくる。

ギブソンは2016年の大統領選挙でのトランプ当選を聞いて「別の現実にいるような感覚を覚えて」書きかけていた小説をイチから書き直すことにしたという*4。こっちも発売はだいぶ先で2018年1月予定。

 

The Last Neanderthal: A Novel

The Last Neanderthal: A Novel

 

ユヴァル・ノア・ハラリ推薦。

遠い昔の厳しい冬、ネアンデルタール人最後の家族の長女"Girl"は生き残っている仲間を探すために旅に出た。時を経た現代、考古学者のロザムンド・ゲイルはネアンダルタール人が作成した遺物を発見する・・

40000年の時を隔てた2人の女性、または1人のネアンデルタールと1人のサピエンスの妊娠を通して「人間とは何か」を考察する小説。

 

Business & Society

Age of Anger: A History of the Present

Age of Anger: A History of the Present

 

ナショナリズムの広がり、ソーシャルメディアでの人種差別、こうした世界的な動きの背後には何があるのだろうか。

インドの作家パンカジ・ミシュラは、現代のような「怒りの時代」が過去にもあったと概説する。19世紀のドイツの軍人、救世主的な革命を求めたロシア。新しい技術や社会の変動が生まれると、そこから「取り残された」人々はデマの影響を受けやすくなる。

ブレクジット、トランプ当選、フランス大統領選、その底流には怒りがある。

 

Thank You for Being Late: An Optimist's Guide to Thriving in the Age of Accelerations

Thank You for Being Late: An Optimist's Guide to Thriving in the Age of Accelerations

 

「フラット化する世界」のトーマス・フリードマン新作は「加速化する世界」がテーマだ。技術、市場、自然環境、それらの変化が一度に加速度的に起こっているのが現代の特徴であると語るフリードマンのフィールドワーク集。変化のスピードが変化している時代に立ち止まって考えるための一冊。

 

The Content Trap: A Strategist's Guide to Digital Change

The Content Trap: A Strategist's Guide to Digital Change

 

大事なのはコンテンツよりもコネクションだ。

米国の報道メディアや中国のインターネット企業などの例を挙げて「コンテンツの価値をお金をかけて守る」よりも「顧客とのつながりを発掘する」ことが重要であると説く本。

良くも悪くも全てのコンテンツが半製品に過ぎず、顧客とつながって初めて完成品になる時代のケーススタディ集。

 

The Upstarts: How Uber, Airbnb and the Killer Companies of the New Silicon Valley are Changing the World

The Upstarts: How Uber, Airbnb and the Killer Companies of the New Silicon Valley are Changing the World

 

The Everything Store(邦題:ジェフ・ベゾス 果てなき野望)のブラッド・ストーン新作。

UberやAirbnbといった企業は「他人の車に乗る」「他人の家に行く」という行動に対する文化的な抵抗感を変えてしまった。ハングリーで独裁的な新世代の若き起業家たちはいかにしてこうした変化を実現したのか。

ドン・タプスコットに「UberやAirbnbはシェアビジネスじゃなくて単なるアグリゲートビジネスだ」と揶揄されたり、この本が出た直後にUberの幹部が辞任するなど、いろいろ不透明ではあるけれどエキサイティングな業界の現場を伝える一冊。

 

Chaos Monkeys: Obscene Fortune and Random Failure in Silicon Valley

Chaos Monkeys: Obscene Fortune and Random Failure in Silicon Valley

 

ライアーズ・ポーカー、ミーツ、ソーシャル・ネットワーク。

チンパンジーがデータセンターで暴れたとしても大丈夫か?想像できる範囲のエラーではなくランダムなエラーに対応できるかをテストするためにエンジニアは「カオスモンキー」(モンキーテスト)という言い方をする。

テック系の起業家は、社会に対するカオスモンキーなのだ。ウォール街からシリコンバレーに渡りフェイスブックのプロダクトマネージャーを経験したアントニオ・ガルシア・マルティネスが、巨大企業がいかに我々の生活を侵食しているかの内幕を暴く。

 

Science & Technology

To Be a Machine: Adventures Among Cyborgs, Utopians, Hackers, and the Futurists Solving the Modest Problem of Death

To Be a Machine: Adventures Among Cyborgs, Utopians, Hackers, and the Futurists Solving the Modest Problem of Death

 

ヒューマズムからトランスヒューマニズムへ。

皮下へのデバイスの移植、ロボット兵士による戦争、意識のアップロード、不死の実現。ニューヨーカー誌などのコラムニストであるマーク・オコンネルがテクノロジーと哲学的な側面の双方から案内する、「機械の体が欲しい」という欲望の銀河鉄道への旅。

 

Reality Is Not What It Seems: The Journey to Quantum Gravity

Reality Is Not What It Seems: The Journey to Quantum Gravity

 

人間に現実と見えているものは現実ではない。

時間と空間は何でできている?物質はどこからやって来る?そしてリアリティとは何か?アリストテレスからアインシュタインまで、ファラデーからヒッグスまで、物理学者のカルロ・ロヴェッリが量子重力理論を通じて教える「リアリティの歴史」。

 

Other Minds: The Octopus, the Sea, and the Deep Origins of Consciousness

Other Minds: The Octopus, the Sea, and the Deep Origins of Consciousness

 

人間とは全く違う知性と意識のあり方があるのではないか?

タコが、そのヒントをくれる。彼らの神経細胞は8本の足に集まっている。科学者でありスキューバダイバーでもあるピーター・ゴドフレイ・スミスは近年の研究結果から、それらの足が「自分で考えている」と語る。

岩明均「寄生獣」の中で、細かくちぎられてもそれぞれ独立して動くパラサイトをマッド科学者が「思考する筋肉」と名付ける場面があるけど、タコもそれに近いのかも。愛しのオクトパス――海の賢者が誘う意識と生命の神秘の世界とセットでどうぞ。

 

I Contain Multitudes: The Microbes Within Us and a Grander View of Life

I Contain Multitudes: The Microbes Within Us and a Grander View of Life

 

我々は体の中に10兆の群衆を抱えている。それは細胞の数よりも多い。

微生物、細菌は病原菌として忌み嫌われやすいが、彼らは免疫システムを形成するのに重要である。それだけじゃない、彼らは遺伝子の形成にまで関与する。たとえばあるバクテリアを蚊に作用させることで、蚊がウイルスを媒介できないようにしてしまえるかもしれない。

あなたの体は9割が細菌」など体内微生物に焦点を当てた本の最新アップデート。ビル・ゲイツもオススメしている一冊。*5

 

A New Map of Wonders: A Journey in Search of Modern Marvels

A New Map of Wonders: A Journey in Search of Modern Marvels

 

新・世界ふしぎ発見。

初めて虹を見たときや赤子の心音を聞いたとき。ジャーナリストのキャスパー・アンダーソンが編む「センス・オブ・ワンダー」の新しい地図。

本の発売は2017年秋の予定だけど特設サイトが既に設置されている。太陽系外惑星で初めて天気が観測された、植物は茎をファイバーケーブルのように使って地下に光をあてる、など面白いポストが多数。

 

その他実用書 

Marijuana Edibles: 40 Easy & Delicious Cannabis-Infused Desserts

Marijuana Edibles: 40 Easy & Delicious Cannabis-Infused Desserts

 

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大麻料理界の平野レミ、ローリー・ウルフお姐さんが教える40のレシピ集!

民衆よ、マリー・アントワネットに言ってやれ。パンがなくても、葉っぱがあればいいじゃない!!

 

 

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以上終わり。

読んで面白かった本は記事にして紹介していく予定。