未翻訳ブックレビュー

世界の本への窓 by 植田かもめ

2018-01-01から1年間の記事一覧

俺のグラミー/アカデミー/ピュリッツァー賞2018

年に一度の"自己満足"の祭典。それが、俺のグラミー/アカデミー/ピュリッツァー賞。 2018年に管理人が気に入った音楽と映画と本を紹介します。今年でもう4回目。 記事の最後にこのブログ運営の雑感も書いているのであわせてどうぞ。今年も、読んでくれたみな…

人類さん、ソーシャル過ぎません? - 2018年に読んだ本から

この記事で言いたいこと 人間の理性は、「ハイパーソーシャル」な特殊環境で他人を説得するために進化したニッチな能力だ。そこには集団で不合理な決定をしてしまうという負の側面がある。そして、ソーシャル過ぎるメディア環境では、事実を重視する「ファク…

2018年ベスト小説 - クッツェー「マイケル・K」

この記事で言いたいこと 土のように優しく生きようとする人間にとっては、賞賛も暴力になる。 クッツェーの小説「マイケル・K」は、感情語や装飾表現を「焼き払った」文章で、個人の流転と自由を描いた傑作。 目次 2018年ベスト小説 ざっとあらすじ 描写うま…

お金より時間より大事なリソース - 21 Lessons for the 21st Century by Yuval Noah Harari

この記事で言いたいこと ユヴァル・ノア・ハラリは、毎日2時間、瞑想するらしい。 アテンション(注意、注目)は、現代で最も希少で重要なリソースだ。 誰もが瞑想したがっているわけじゃないけれど、自分でアテンションをコントロールするのが大事。 目次 …

【寄稿連載更新】中国のAI開発について2018年の決定版

タトル・モリエイジェンシーさんが世界の本棚からお薦めを紹介する「翻訳書ときどき洋書」への寄稿連載、更新しました。 グーグル中国法人*1の代表などを歴任したカイフー・リーの本を紹介しています。中国のAI開発について、断片的なwebニュースは多いと思…

自分を大きく見せるためじゃない自分語り - 「悲しくてかっこいい人」 by イ・ラン

イ・ラン(Lang Lee) - 悲しくてかっこいい人 韓国の自由で気高い魂、 シンガーソングライターのイ・ランのエッセイ集。 セカンドアルバムの「神様ごっこ」(名作!)を聴いて以来、彼女の表現世界がとても好きで、ミランダ・ジュライと並べた記事を以前に…

【いいウソ、あります】エトガル・ケレットのドキュメンタリー「ホントの話」

日本での劇場公開や動画配信は未定。でもめちゃくちゃ面白かったドキュメンタリー「エトガル・ケレット ホントの話」(Etgar Keret - Based on a true story)を紹介したい。 先に言いたいことを書いておくとこんな感じ。世の中には「悪いウソ」を使うのが上…

【番外】時差別の人口という考え方、あと88rising

書評じゃない小ネタ記事。 世界で一番人口の多い「時間帯」はどのタイムゾーンかご存知だろうか。 目次 文明のタイムゾーン史観? 88risingとは ネットのギミックをブランドに変える おまけ:その他のタイムゾーン

ネオ・チャイナ、面白い

前の記事で紹介したブックリストに出てくる「ネオ・チャイナ:富、真実、心のよりどころを求める13億人の野望」を読んだ。これ、めちゃくちゃ面白い。

【寄稿連載更新】マイケル・ルイスの新作はトランプ政権について

タトル・モリエイジェンシーさんが世界の本棚からお薦めを紹介する「翻訳書ときどき洋書」への寄稿連載、更新しました。 手前ミソですが、これは良く書けた回だと思うので、ぜひご覧ください↓

【ブックガイド】ユヴァル・ノア・ハラリと行く12冊の人類観察ツアー

A Haphazard Guided Tour of Humanity on the Brink: a collection of some favorite books. pic.twitter.com/aImxQOBSPF — Yuval Noah Harari (@harari_yuval) October 29, 2018 小ネタ記事。 「サピエンス全史」「ホモ・デウス」のユヴァル・ノア・ハラリ…

ジュノ・ディアスとMeToo - その3 - ボストン・レビューの声明文の和訳

前の記事↑からの続き。 ピュリッツァー賞作家ジュノ・ディアスのパワハラ・セクハラ疑惑(経緯は前の記事参照)に際して、政治・文化メディアのBoston ReviewがWeb上に発表した声明文を以下に勝手に訳す。

ジュノ・ディアスとMeToo - その2 - セクハラ・パワハラ疑惑

ピュリッツァー賞作家ジュノ・ディアスの絵本を紹介した前の記事↑からの派生記事。 というか、ここからが本題。 前の記事を書くときにジュノ・ディアスの近況を調べてみたら、2018年の5月に彼に対するセクハラ・パワハラ疑惑が起こっていた。その経緯は次の1…

ジュノ・ディアスとMeToo - その1 - 新作絵本の書評

Junot Diaz - Islandborn 本書"Islandborn"の主人公ローラが通う学校の子どもたちは、皆どこか別の場所の出身だ。 「みんながもともといた国のことを絵に描こう」 先生がそう課題を出したとき、他の生徒は色めきだったがローラは困ってしまう。生まれてすぐ…

【寄稿連載更新】人工肉の世界へようこそ

タトル・モリエイジェンシーさんが世界の本棚からお薦めを紹介する「翻訳書ときどき洋書」への寄稿連載、更新しました。 ビールを醸造するように幹細胞から肉を培養する「アニマル・フリー」な肉の実用化を目指すスタートアップ企業を描くノンフィクションを…

【さよなら人類】ホモ・サピエンスからホモ・デウスへ - Homo Deus by Yuval Noah Harari

Homo Deus: A Brief History of Tomorrow 2016/10/31 初出 2018/09/09 日本語版「ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来」発売につき更新 「あなたが望めば戦争は終わる」とジョン・レノンは言ったけれど、望まなくても戦争が終わり、望まないと死ね…

【寄稿連載更新】美の進化

note「翻訳書ときどき洋書」内の連載、更新しています。

これも愛 - The First Bad Man by Miranda July

The First Bad Man: A Novel (English Edition) 作者: Miranda July 発売日: 2015/01/13 ミランダ・ジュライの小説”The First Bad Man"の主人公Cheryl(シェリル)は、自分の生活スタイルを「システム」と呼ぶ。人は沈んだ気分になると皿洗いも面倒になって…

未来が見える未訳本カタログ2018

最終更新:2018.11.17 毎年恒例、面白そうな未訳本のまとめ記事を今年も作成してみた。 去年までは5月の連休の時期に書いていたけど、今年は夏の公開にした。理由は、英語圏では「サマー・リード」や「ビーチ・リード」などの名前で、本の紹介情報が夏に数多…

【寄稿連載更新】アンチ・ソーシャル・メディア

note「翻訳書ときどき洋書」内の寄稿連載、更新しました!

世界全体があなたを愛する楽園 - 村田沙耶香「消滅世界」

「LGBTは子どもを産まないため生産性がなく、彼らに税金を投入するのはおかしい」という主旨の寄稿をした国会議員がいた。 この意見は差別だし真っ当な反論は各所でされている。でも、その議員には別の質問もしてみたい。もし次のように訊いたら、なんと答え…

【寄稿連載更新】「なぜ」の本 - 原因と結果の新しい科学

note「翻訳書ときどき洋書」内の寄稿連載、更新しました! 「コンピューター科学者にしてパートタイムの哲学者」と自称するジュディア・パールの本、"The Book of Why"を紹介しています。 なぜ人は「なぜ」という疑問を持てるのか。 前回紹介した"Factfulnes…

【和訳】ユヴァル・ノア・ハラリが語る、ゲイであること(そして科学研究で大事なこと)

2018.9.29追記: 「ユヴァル・ノア・ハラリ」で検索してこのページにアクセスする方が多いので、ハラリ関連の過去記事まとめを末尾に作りました。当記事とあわせてぜひどうぞ。

【取材協力】サイゾー18年7月号「タブーな本150冊」

サイゾー 2018年 7月号 [雑誌] 作者: サイゾー編集部 出版社/メーカー: サイゾー 発売日: 2018/06/18 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る お知らせです。 月刊サイゾー18年7月号の特集「タブーな本150冊」に取材協力しました。 同誌の年に一度の…

数字を見たらとにかく割ろう - "Factfulness"の教えの具体例

以下の連載で紹介したハンス・ロスリング著"Factfulness"(ファクトフルネス)に関するスピンオフ記事。

ハイテンション!統計実況おじさん〜寄稿連載更新

お知らせです。 「翻訳書ときどき洋書」内の寄稿連載更新しました! note.mu 統計をエンタメに変えた男、ことハンス・ロスリングの本を紹介しています。 ぜひどうぞ。

変わるのは火星か人間か - How We'll Live on Mars by Stephen Petranek

How We'll Live on Mars (TED Books) (English Edition)作者: Stephen Petranek 第二次世界大戦終結から6年後の1951年、"Das Marsprojekt"(The Mars Project)というドイツ語で書かれた小冊子がアメリカで発行された。レイ・ブラッドベリによる1950年作「火…

【お知らせ】寄稿連載を始めました

お知らせです。Webメディアで寄稿連載を開始しました。 日本の翻訳出版の著作権仲介で60%のシェアを持っていて、ムーミンの版権管理会社でもあるタトル・モリエイジェンシーさんがnote上に新しく立ち上げたページ「翻訳書ときどき洋書」に掲載されています。…

寝なくて平気は自覚がないだけ - Why We Sleep by Matthew Walker

わかっちゃいるけど寝てられない。 そんな人が読むべき本。 神経科学者で心理学者のマシュー・ウォーカーによる本書"Why We Sleep"は、睡眠の重要性を詳述する。睡眠不足は認知能力の低下を招くだけでなく、肥満や高血圧から免疫不全や癌まで健康上のリスク…

霞が関の中心でデジタル独裁を叫んだ会長

叫んではいないだろうけれど、経済同友会の会長は「サピエンス全史」のユヴァル・ノア・ハラリがお好きなようだ。 ハラリが2018年1月のダボス会議で語ったDigital Dictatorship(デジタル独裁)という概念を、三菱ケミカルの会長でもある小林喜光氏が国交省…