未翻訳ブックレビュー

世界の本への窓 by 植田かもめ

【ブックガイド】ユヴァル・ノア・ハラリと行く12冊の人類観察ツアー

 

 

小ネタ記事。

 

「サピエンス全史」「ホモ・デウス」のユヴァル・ノア・ハラリが、ツイッターにオススメ本リストを投稿していたので以下にまとめてみた。

 

詳細は不明なのだが、どうやらこれはApple Books*1とのタイアップ企画らしい。

 

タイトルは、

"A Haphazard Guided Tour of Humanity on the Brink"

と名付けられている。

 

旅行会社のツアーの名前みたいに訳すならば、

「歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリさんと行く! がけっぷち人類気まぐれガイドツアー」

という感じだろうか。絶滅危惧種のホモ・サピエンスに会いに行く本の旅である。ニューエリートの皆さんも、オールド大衆の皆さんも、がけっぷち人類の同胞として、ウェルカム・オン・ボード。

 

ちなみに、手前ミソだけど、以前"Sapiens"を書評したときに「宇宙人に人類史を教えるための7+1冊:Sapiensから広げるブックリスト」という記事を書いたので、よかったらあわせてご覧いただきたい。

 

ではどうぞ。
全12冊中、8冊は邦訳もあるのであわせてリンクしておいた。

 

"A Haphazard Guided Tour of Humanity on the Brink"
(がけっぷち人類気まぐれガイドツアー)

 

1. Aldous Huxley - Brave New World

Brave New World (English Edition)

Brave New World (English Edition)

 
すばらしい新世界〔新訳版〕 (ハヤカワepi文庫)

すばらしい新世界〔新訳版〕 (ハヤカワepi文庫)

 
すばらしい新世界 (光文社古典新訳文庫)

すばらしい新世界 (光文社古典新訳文庫)

 

ディストピアSFのクラシック中のクラシックであるオルダス・ハックスレーの1932年作(と言いつつ、管理人は先日はじめて読んで感動した)。

 

なお、ハラリは3冊目の著書"21 Lessons for the 21st Century"内で"Science Fiction"という章を設けて、本書をネタバレ全開で絶賛している。

 

 

2. Daniel Kahneman - Thinking, Fast and Slow

Thinking, Fast and Slow (English Edition)

Thinking, Fast and Slow (English Edition)

 
ファスト&スロー (上)

ファスト&スロー (上)

 
ファスト&スロー (下)

ファスト&スロー (下)

 

こちらも既に心理学と行動経済学のクラシックと言えそうな「ファスト&スロー」。カーネマンはハラリの「ホモ・デウス」に推薦文を寄せている。

余談だけど、自戒も込めて、最近いろんな人がいろんな事を「認知バイアス」のひと言で説明していて、便利に使いすぎな気もする。

 

 

3. Frans De Waal - Our Inner Ape

Our Inner Ape: A Leading Primatologist Explains Why We Are Who We Are (English Edition)

Our Inner Ape: A Leading Primatologist Explains Why We Are Who We Are (English Edition)

 
あなたのなかのサル―霊長類学者が明かす「人間らしさ」の起源

あなたのなかのサル―霊長類学者が明かす「人間らしさ」の起源

 

最近では「動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか」の著書がある動物行動学者フランス・ドゥ・ヴァールの一冊。サルがわかればヒトも(だいたい)わかる。 

 

 

4. Evan Osnos - Age of Ambition: Chasing Fortune, Truth and Faith in the New China

Age of Ambition: Chasing Fortune, Truth and Faith in the New China

Age of Ambition: Chasing Fortune, Truth and Faith in the New China

 
ネオ・チャイナ:富、真実、心のよりどころを求める13億人の野望

ネオ・チャイナ:富、真実、心のよりどころを求める13億人の野望

 

21世紀は中国のもの。ハラリはダボス会議の講演などで「20世紀は分散処理型の民主主義が独裁をoutperformしてきたけれど、21世紀のAI時代には、膨大なデータを一箇所に集める中央処理型の『デジタル独裁』が民主主義をoutperformするのではないか」と語っている。

 

 

5. Jared Diamond - Guns, Germs And Steel

Guns, Germs And Steel: A Short History of Everbody for the Last 13000 Years (English Edition)

Guns, Germs And Steel: A Short History of Everbody for the Last 13000 Years (English Edition)

 
文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)

文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)

 
文庫 銃・病原菌・鉄 (下) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)

文庫 銃・病原菌・鉄 (下) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)

 

これは説明を省略。読んでない人はハラリの本より優先して読むべし。

 

 

6. Cathy O'neil - Weapons of Math Destruction

Weapons of Math Destruction: How Big Data Increases Inequality and Threatens Democracy

Weapons of Math Destruction: How Big Data Increases Inequality and Threatens Democracy

 
あなたを支配し、社会を破壊する、AI・ビッグデータの罠

あなたを支配し、社会を破壊する、AI・ビッグデータの罠

 

データサイエンティストが暴く「平等なはずのアルゴリズムが格差や不正を助長する理由」。

 

このブログ的にも激オススメ本で、何度か紹介したので是非ご一読を。

言いにくいことは機械が言ってくれる?(植田かもめ)|翻訳書ときどき洋書|note

データが正義を殺すとき。'数学'破壊兵器とは - Weapons of Math Destruction by Cathy O'Neil

 

 

7. Elizabeth Kolbert - The Sixth Extinction 

The Sixth Extinction: An Unnatural History

The Sixth Extinction: An Unnatural History

 
6度目の大絶滅

6度目の大絶滅

 

2050年には種の半分が消える?ハラリの特徴として、人間中心主義を疑う、という視点があるのだけど、この本もそういう視点を支えているのではないかと思う。

 

 

8. David Van Reybrouck - Congo: The Epic History of a People

Congo: The Epic History of a People (English Edition)

Congo: The Epic History of a People (English Edition)

 

これは2018年10月時点で邦訳なし。「世界で最も失敗した国」のひとつであるコンゴの歴史を描くノンフィクション。紙版で658ページ・・

 

 

9. Joby Warrick - Black Flags: The Rise of ISIS 

Black Flags: The Rise of ISIS

Black Flags: The Rise of ISIS

 
イスラーム国の黒旗のもとに ―新たなるジハード主義の展開と深層―

イスラーム国の黒旗のもとに ―新たなるジハード主義の展開と深層―

 

これも歴史ノンフィクション。オスマン帝国時代まで遡ってシリア人歴史家が描くISIS。

 

 

10. Ioan Grillo - Gangster Warlords

Gangster Warlords

Gangster Warlords

 

アフリカ、中東と来て、次はメキシコとブラジル。中南米のドラッグ取引や暴力に迫るノンフィクション。これも2018年10月時点で邦訳なし。

 

 

11. Timothy Snyder - The Road to Unfreedom

The Road to Unfreedom: Russia, Europe, America

The Road to Unfreedom: Russia, Europe, America

 

これも2018年10月時点で邦訳なし。イェール大の歴史学者が描く「不自由への道」。 

 

 

12. Steven Pinker - Enlightenment Now

Enlightenment Now: The Case for Reason, Science, Humanism, and Progress

Enlightenment Now: The Case for Reason, Science, Humanism, and Progress

 

ピンカー最新作「啓蒙なう」。これも2018年10月時点で邦訳なしだけどいずれ出るだろう。ビル・ゲイツも絶賛。

 

以上!

A Teacher's Guide to Brave New World: Common-Core Aligned Teacher Materials and a Sample Chapter

*1:iOS12以降のiBooksの後継アプリ。エディターや批評家によるコレクション(Apple Musicでいうところのプレイリスト)がけっこう充実している印象。とはいえ、Amazon Musicで音楽を聞いている人が少なそうなのと同じように、Apple Booksで電子書籍を読んでいる人も少なそうなので、記事にはアマゾンのリンクを貼った