未来が見える未訳本カタログ2018
最終更新:2018.11.17
毎年恒例、面白そうな未訳本のまとめ記事を今年も作成してみた。
去年までは5月の連休の時期に書いていたけど、今年は夏の公開にした。理由は、英語圏では「サマー・リード」や「ビーチ・リード」などの名前で、本の紹介情報が夏に数多く出てくるので、それを取り込みたかったから。
たとえば、JPモルガンは今年まで述べ19年にわたり読書リストを公開している。また、ビル・ゲイツも毎年「この夏に読むべき本」を公開している。
この記事で紹介するカテゴリーは去年までと同じ以下の3つ。
- Fiction & Art / フィクションと芸術
- Business & Society / ビジネスと社会
- Science & Technology / テクノロジーと科学
で、今年はそれにプラスして、今までこのブログ等で紹介した中から「ついに邦訳が出る本!」枠と「邦訳が一番出てほしい本!」枠を作った。それぞれ一冊紹介する。
ではどうぞ。
目次
カタログ:Fiction & Art
グラフィック・ノベル(コミック)として初めて、英ブッカー賞の候補作入りした一冊。
若い女性の失踪をめぐるサスペンスの形式を通して、「信用と信頼が消失した」インターネット時代を描く、29歳の作家ニック・ドルナソの初長編。ゼイディー・スミスも"masterpiece"と絶賛。*1
母親になるべきか。それは何を手に入れて、何を失うことなのか。
カナダ出身の小説家、シェイラ・ヘティの長編小説。「ギリシャ哲学が現実の見方を変えたのと同じぐらいのレベルで、女性と人生についての考えを変えてしまう本」とミランダ・ジュライがオススメ。*2
「舞踏会へ向かう三人の農夫」「われらが歌う時」などのリチャード・パワーズ新作!
4つの木と4人の人間をめぐる物語はやがてひとつになる。もしも木々が話せたら何を語るだろう。私たちのすぐ隣に、私たちが知らない物語がある。
「オスカー・ワオの短く凄まじい人生」のジュノ・ディアスの新作は、移民とアイデンティティについての絵本。
発売が当初予定から延期されていて、いまの発売予定は10月・・
How to Fall in Love with Anyone: A Memoir in Essays (English Edition)
- 作者: Mandy Len Catron
- 出版社/メーカー: Simon & Schuster
- 発売日: 2017/06/27
- メディア: Kindle版
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誰とでも恋をしたいなら、こんな風にしてみれば?
NYタイムスに掲載され話題になったコラム*3を基にしたエッセイ集。ドラマやFacebookの投稿で語られる恋愛と同じ原理で、実際の恋愛も動いているのだろうか。
カタログ:Business & Society
21 Lessons for the 21st Century
- 作者: Yuval Noah Harari
- 出版社/メーカー: Spiegel & Grau
- 発売日: 2018/09/04
- メディア: Kindle版
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イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ、3冊目の本!
「サピエンス全史」が「過去」、
「ホモ・デウス」が「未来」、
そして本作が焦点を当てるのは「現在」。
Youtubeでハラリの講演動画*4とかを見ていると、観客からの「移民の問題をどう思うか?」「地球温暖化の問題をどう思うか?」みたいなビッグ・クエスチョンに百人組手のように次々と答えていくものがあるので、そんな感じの本だろうと推測する。
なお、2作目「ホモ・デウス」は下の方で「ついに邦訳が出る本!」として紹介しているのでそちらも参照。
「マネー・ボール」他のマイケル・ルイス新作!
トランプ当選の翌日、米国エネルギー省のチームは政権交代に伴う手続の準備をしようとしていた。しかし、そこには誰も現れなかった。「意図的な無策」というトランプ政権下でのリスクと、その埋め合わせをする名もなきヒーローたち(unsung heroes)のノンフィクション。
Anti-Fandom: Dislike and Hate in the Digital Age (Postmillennial Pop)
- 出版社/メーカー: NYU Press
- 発売日: 2019/01/08
- メディア: Kindle版
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(なんか書影が全然関係ないものになってるが。。)
私たちは誰かを集団で叩くのが大好きだ。「ファンベースが大事」と語られるが、ヘイトなどの「アンチ・ファンダム」にどう対処するか。2019年1月発売予定の評論集。
歴史上の人物たちはどんな「グランド・ストラテジー」を決断してきたのか。イエール大の講義シリーズを基にしたピュリッツァー賞受賞作。
Fully Automated Luxury Communism
- 作者: Aaron Bastani
- 出版社/メーカー: Verso
- 発売日: 2019/01/22
- メディア: ハードカバー
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全自動・ラグジュアリー・共産主義。
技術革新は人の仕事を奪う?でも、人は労働から解放されてしかも貧困からも自由になるのでは?政治学の研究者によるひとつの楽観論。発売は19年1月予定。
カタログ:Science & Technology
進化にとって「美」とは何か。
ダーウィンの忘れられた理論を通じて、「交配相手選び」が進化に与えた影響を探る一冊。
人工肉の世界へようこそ。
動物の細胞から培養された、「安心」で、「クリーン」な肉を実用化する技術が、大学や企業で進んでいる。本書はその最前線の記録。
The Truth Machine: The Blockchain and the Future of Everything
- 作者: Michael J. Casey,Paul Vigna
- 出版社/メーカー: HarperCollins
- 発売日: 2018/03/22
- メディア: Kindle版
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ブロックチェーンは、真実性を担保する装置=Truth Machineとして、自分のデータへのコントロールを個人が取り戻す社会をもたらすか。
暗号通貨の時代("The Age of Cryptocurrency")の著者コンビによる新作。
- 作者: Brian MacKenzie,Dr. Andy Galpin,Phil White
- 出版社/メーカー: Victory Belt Publishing
- 発売日: 2017/07/11
- メディア: Kindle版
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ウェアラブルデバイスやアプリから蓄積される身体データ。で、それをどう使うの?
テクノロジーからいかに切断(アンプラグ)するかをキーワードに、アスリートのパフォーマンスを研究する著者が案内する「デジタル・ウェルビーイング」のあり方。
「次のホーキング」ことイタリアの物理学者カルロ・ロヴェッリの新作!
時間とは何なのか。人間が認知できる現実と、物理世界の「真実」がいかにかけ離れているかを、詩情たっぷりに解説する。
参考:“時間の正体”はどこまで明らかになったか(倉田幸信)|翻訳書ときどき洋書|
ついに邦訳が出る本!
Yuval Noah Harari - Homo Deus: A Brief History of Tomorrow
(ユヴァル・ノア・ハラリ「ホモ・デウス」)
「サピエンス全史」のハラリの2作目「ホモ・デウス」、ついに9月に邦訳が出る!
人間中心主義からデータ主義(Dataism)へ。このブログでは何度も紹介しているけれど、本当に「世界をどう見るかの視点が変わる本」だと思う。落合陽一のデジタルネイチャーが難しくてよく分からなかった人にもオススメ(笑)
エッセンスを手っ取り早く知りたい方は以下の過去記事をぜひどうぞ。
邦訳が一番出てほしい本!
Hans, Ola and Anna Rosling - Factfulness
(ハンス、オーラ&アナ・ロスリング「ファクトフルネス」)
ストレスフリーで生きたいならば、ファクトを重視しよう。
人間はファクトを歪める「クセ」が強すぎる。その傾向と対策を知る一冊。
このブログ外で書いている連載で既に取り上げたので、最後に告知↓↓
おまけ:「いま世界にいる本たち」
タトル・モリエイジェンシーさんが運営しているnote「翻訳書ときどき洋書」で、面白そうな洋書を紹介する連載を担当しているのでぜひどうぞ。
"Factfulness"を紹介したバックナンバーは以下の回!
追記:日本語版が2019年1月に発売!
以上終わり。
紹介した本は(読んで面白かったら)このブログか上の連載などで取り上げていく予定。