未翻訳ブックレビュー

世界の本への窓 by 植田かもめ

【ブックガイド】ユヴァル・ノア・ハラリと行く12冊の人類観察ツアー

 

 

小ネタ記事。

 

「サピエンス全史」「ホモ・デウス」のユヴァル・ノア・ハラリが、ツイッターにオススメ本リストを投稿していたので以下にまとめてみた。

 

詳細は不明なのだが、どうやらこれはApple Books*1とのタイアップ企画らしい。

 

タイトルは、

"A Haphazard Guided Tour of Humanity on the Brink"

と名付けられている。

 

旅行会社のツアーの名前みたいに訳すならば、

「歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリさんと行く! がけっぷち人類気まぐれガイドツアー」

という感じだろうか。絶滅危惧種のホモ・サピエンスに会いに行く本の旅である。ニューエリートの皆さんも、オールド大衆の皆さんも、がけっぷち人類の同胞として、ウェルカム・オン・ボード。

*1:iOS12以降のiBooksの後継アプリ。エディターや批評家によるコレクション(Apple Musicでいうところのプレイリスト)がけっこう充実している印象。とはいえ、Amazon Musicで音楽を聞いている人が少なそうなのと同じように、Apple Booksで電子書籍を読んでいる人も少なそうなので、記事にはアマゾンのリンクを貼った

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ジュノ・ディアスとMeToo - その3 - ボストン・レビューの声明文の和訳

オスカー・ワオの短く凄まじい人生 (新潮クレスト・ブックス)

前の記事↑からの続き。

 

ピュリッツァー賞作家ジュノ・ディアスのパワハラ・セクハラ疑惑(経緯は前の記事参照)に際して、政治・文化メディアのBoston ReviewがWeb上に発表した声明文を以下に勝手に訳す。

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ジュノ・ディアスとMeToo - その2 - セクハラ・パワハラ疑惑

こうしてお前は彼女にフラれる (新潮クレスト・ブックス)

 

ピュリッツァー賞作家ジュノ・ディアスの絵本を紹介した前の記事↑からの派生記事。

 

というか、ここからが本題。

 

前の記事を書くときにジュノ・ディアスの近況を調べてみたら、2018年の5月に彼に対するセクハラ・パワハラ疑惑が起こっていた。その経緯は次の1-4の通り。

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ジュノ・ディアスとMeToo - その1 - 新作絵本の書評

Islandborn

Junot Diaz - Islandborn

 

本書"Islandborn"の主人公ローラが通う学校の子どもたちは、皆どこか別の場所の出身だ。

 

「みんながもともといた国のことを絵に描こう」

 

先生がそう課題を出したとき、他の生徒は色めきだったがローラは困ってしまう。生まれてすぐに故郷の「島」を離れたから、彼女にはその場所の記憶がない。猫を探すように頭の中で「島!」と呼びかけてみても、猫が見つからないのと同じように何も浮かばない。

 

だから彼女は、自分の姉や家族、近所の人に「島」について聞いて回る。詩のような浜辺(beach poems)、いるかやくじらのサーフィン、大きなフルーツ、空気よりもあふれる音楽(more music than air)。コミュニティの記憶をつなぎあわせて、彼女の中で「島」が形作られていく。

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