未翻訳ブックレビュー

世界の本への窓 by 植田かもめ

あなたにYouTubeを何時間も見させるだけの技術なんてクソなのでは? - AI2041

AI 2041: Ten Visions for Our Future

 

新潮社「Foresight」での連載「未翻訳本から読む世界」、更新されています。

 

グーグル中国法人の代表でもあったリー・カイフーがSF作家チェン・チウファンとタッグを組んだ新著『AI2041』を紹介しています。半分SF小説、半分評論という異色の一冊です。

 

この記事ではスピンオフ話をします。一時期(2~3年前)に比べると、AIを話題にする本は減っているという印象があるのですが、いかがでしょうか。

 

これには理由があって、実はディープ・ラーニングと呼ばれる現在主流のAI技術は既に飽和状態にあるからだと思います。理論的な研究は一段落していて、後はそれを人間がどう使うかという競争にフェーズが移っているのです。リー・カイフーはこれを前著『AI世界秩序』で、「AI開発が『発見』の時代から『実装』(implementation)の時代に入った」と表現しました。

 

で、いまビジネスの現場で起こりがちな課題は何かというと、「AIを使うのは当たり前になったけれど、大した成果を挙げられていない」という課題だと思うのです。

 

本書が挙げる例を引用すると、我々の好みを分析してYouTubeを何時間も見させたり、広告をできるだけ多くクリックさせるためにAI技術は活用されています。金額ベースで換算すると、AIの使い途として最も成功しているのはこうした用途かもしれません。

 

本書の問題意識を要約すると「せっかくAIという凄い技術があるのに、そんなショボい用途が最大の成功例のままでいいのか?」という問題意識だと思います。ギリシア神話に登場するタロスや中国古代の民話に登場する偃師(えんし)など、自律して動くロボットまたは人形は古来から存在する人類の夢です。その夢の技術が手に入ったのに、GAFAを肥え太らせるだけでよいのだろうか、とリー・カイフーは訴えているのではないかと思います。

 

もちろん現代でも創薬分野での利用などAIの用途は広がっていますが、より視野を広げよう、と提唱するのが本書だと思います。さて、2041年のAIの使い途はどのようになっているのでしょうか。

*Yahooでの記事単品売り

*前著をレビューしたときの記事