未翻訳ブックレビュー

世界の本への窓 by 植田かもめ

SDGsは17個も目標があるけれど実質はただ1つ - Net Positive

Net Positive: How Courageous Companies Thrive by Giving More Than They Take

 

新潮社「Foresight」での連載「未翻訳本から読む世界」、第4回が更新されました。

 

ユニリーバ社の元CEO(最高経営責任者)であり、SDGsに関する国連の活動にも数多く携わっているポール・ポルマンの著作「Net Positive」を紹介しています。

 

ニュースなどで聞かない日は無いとも言える「SDGs」。国連はその内訳を示すフレームワークとして17の目標を掲げています(よく見るカラフルなやつ)。

 

一見すると多様な目標のように見えますが、本書をヒントに考えると、その本質は「ただ乗りを許さない」という点に集約されるのではないかと思います。つまり、誰かを犠牲にして企業が自身の利益だけを最大化する事を許容しない。「誰か」には気候変動の影響を受ける将来世代も含まれれば、不公平な扱いを受ける労働者や特定のジェンダーの人間も含まれます。

 

この「企業活動の外側で誰かが影響を受けること」を「外部性」(Externality)と呼びます。概念自体は昔からあって、例えば工場の排出物を原因として公害が起こって不利益が発生する事を「外部不経済」と呼びます。

 

で、本書はこの「外部性」を「資本主義の"原罪"」と呼びます。株主利益だけを追求して企業価値を高めようとすると、外部の誰かに悪影響を与えてしまう。過去数十年に渡って欧米を中心に先鋭化した「株主資本主義」(新自由主義、と言い換えてもいいかもしれません)は、この外部性の問題を解決できないとポルマンは考えます。

 

ではどうすればよいのか。そのヒントとして本書が提唱するのが「ネット・ポジティブ」という視点です。「カーボン・ニュートラル」「CO2排出実質ゼロ」といった言葉に代表されるように、サステナブルと言うとプラスマイナスの影響を差し引きゼロにするというイメージを抱く事が多いかもしれません。でもそれでは企業は成長を諦めなければならない。そうではなく、外部のステイクホルダーへの影響も含めて、企業活動の社会への影響を差し引きプラス(=ネット・ポジティブ)にしようという考え方です。

 

その詳細は・・・記事でどうぞ。

 

*連載へのリンク

*Yahoo配信で記事の単品売りもしているようです