未翻訳ブックレビュー

世界の本への窓 by 植田かもめ

コミュニティを捨てよ、ファクトフルネスを読もう

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

 

ロスリングの「Factfulness」、日本語版が発売された。

 

昨年の6月に下の記事で紹介して以来、既に何度かこのブログでは言及して、2018年のベスト本にも挙げた。けど、これは広く読まれるべき本だと思うので、もうひとプッシュしてみる。たぶんこの本について記事を書くのはこれで最後。

 

この記事では、おすすめの読み方を提案してみる。

 

おすすめの読み方(ちょっとずつ読む人向け)

本題に入る前に本書がどんな本であるかを簡単にもう一度紹介すると、「事実に基づく世界の見方」を勧める本である。そして特長は、その構成にある。単に事実を提示するだけでなく、なぜその事実が理解されないかの傾向と対策を示しているのだ。

 

たとえば過去20年で、1日2ドル以下で暮らす極度の貧困にある人の割合は世界人口の29%から9%まで下がった(本書2章より)。でも、G7を含む30カ国を対象に「世界はどのように変化していると思いますか?」と訪ねた調査では、「どんどん悪くなっている」と答えた人の割合が過半数を占める(同じく2章より)。

 

なぜ事実が理解されないのか。そこには、ネガティブなニュースのほうが耳に入りやすいといった「本能」が作用しているのではないか。本書はそう仮説を立てて、ファクトを誤解してしまう原因となる10の「本能」を紹介する。

 

そして本題。日本語版のKindleデータによると、本書の平均的な読書時間は約6時間30分である*1。だから、たとえば1日30分ずつ読んだら、13日間、約2週間で読み終わる計算になる。

 

1日30分、2週間だけ、何かに使っている時間を本書を読む時間に置き換える。そんな読み方をおすすめしたい(難しければ1日15分で1ヶ月でもよい)。

 

たとえばSNSやゲームのアプリをスマホに入れている人なら、毎日30分ぐらいは時間を使っているのではないだろうか。2週間だけそれらのアプリをアンインストールして、その時間で本書を読む。で、終わったら再インストール。

 

「気分転換」という言葉があるけれど、気分を転換しても、その効果は一瞬だけ。でも、良い本を読んで「視点を転換」できたら、その効果はずっと続く。

 

「Factfulness」はそういう効果を与える本のひとつで、だからこそビルゲイツも大卒の希望者全員にプレゼントまでしているのではないかと思う。

 

たとえばツイッターを2週間シャットアウトして、本書を読んだあとに再度ながめてもらいたい。そこには、ファクトからかけ離れた、分断・ネガティブ・直線的な思考・恐怖・過大視・パターン化・宿命(であるという思い込み)・単純化・犯人捜し・焦り、が見られると思う。なお、いま並べたのが本書がまとめた10の「本能」である。

 

この「ファクトフルネス・チャレンジ」、だれかぜひやってみていただきたい。というか自分もそうやって再読するつもり。

 

最後におまけだけど、本書の中の「ファクトフルネスのおかげでわたしがどう命拾いしたか」というエピソードが個人的に大好きだ(第11章に収録)。1989年のザイール(現在のコンゴ)で、ある女性がファクトに基づいて考えるという態度を示してくれたことによって著者のハンス・ロスリングが命拾いしたという話。ハリウッド映画にでもできそうなエピソードである。「愛は地球を救う」かどうかは誰にもわからないけれど、ファクトは命を救うのだ。

 

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

  • 作者: ハンス・ロスリング,オーラ・ロスリング,アンナ・ロスリング・ロンランド,上杉周作,関美和
  • 出版社/メーカー: 日経BP社
  • 発売日: 2019/01/11
  • メディア: 単行本
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Factfulness: Ten Reasons We're Wrong About The World - And Why Things Are Better Than You Think

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*1:2019年1月中旬時点でKindleアプリに表示されるデータ