絶滅危惧種と新陳代謝と - ナショジオの写真集
しばらく前からnoteでフリースタイルな読書日記をつけていて、ほとんどは5分10分だけで書き流す自分メモの延長なのだけど、たまに話が膨らむ。記事として読めそうなものはこちらにも転記してみる。
Evernoteにつけてた読書メモを整理していて思い出したのだけど、むかしナショナルジオグラフィックの絶滅危惧種という写真集を持っていた。何度かの引越しを生き残ったけれど、結局売ってしまった。
そこにはカタツムリなどの小型からオオカミなどの大型動物まで様々な動物が「絶滅危惧レベルのヤバさ」ランクとともに収録されていた。
全ての写真の背景は黒か白で統一されていて、全ての動物は見開き2ページの同じサイズで紹介されていた。生命が平等であることを示すためにその手法を採ったという解説があった。
よく覚えているのは(といっても種の名前は忘れてしまったのだけど)北米のある地域にだけ生息していて既に絶滅していたある鳥の「最後の一羽」が写真に収められていたことだった。
その鳥が最後の一羽だと特定されていて、それが現実に写真に残っていることに不思議な感動を覚えた。もうその鳥は地球には生まれないのだ。なんか勝手にその最後の一羽目線での「アイアムレジェンド」の物語を想像してしまう。環境破壊が原因で絶滅した種だったので、彼または彼女にとっては、人間こそが迫りくるゾンビで、どこかに立てこもって必死で抵抗をしていたのかもしれない。
アマゾンでその写真集を検索すると、著者であった写真家ジョエル・サートレイの新しい写真集が出てきた。
「動物の方舟」という写真集で、世界の動物園・保護施設で飼育されている生物をすべて一人で撮影しようというプロジェクトらしい。
この「写真版ノアの方舟」計画は、10年かけてようやく半ばまで来たそうだ。著者が生きている間に完結しますように。ついでに岩明均の「ヒストリエ」も著者と私が生きている間に完結しますように。
一歳になった娘が、テレビを見たり散歩したときに、犬を見つけたら「ワンワン」、猫は「ニャンニャン」、鳥は「ピーピー」とか言うようになった。この写真集を買って、一緒にながめてみようかなと思う。娘が動物の鳴き声を聴いてワンワンとか言い出したわけではなく、親が話した擬音をマネしているだけだと思うので、たとえばマレーバクをどういう擬音で呼ぶか、こちらの技量が問われるところだ。
と、ここまで書いて、絶滅危惧種写真集を売ったのは正解だったと思った。
おそらく、手元に残していたら、再度検索してみたり、そして著者の別の写真集を見つけたりしていなかったと思うのだ。
冷蔵庫は空けないと新しい食材を入れられないように、本棚もときどき整理しないと新しい出会いが減って新陳代謝が促進されない気がする。所有する、というのは「手元に残って変わらない」という安心をくれるけれど、「変化があっても気付きにくい」という側面があるのではないだろうか。
生物の種が環境破壊などで絶滅してしまうのは悲しいことであり人間の責任だけど、自然環境の変化に合わせて生物が何億年かけて世代交代すること自体は適応であり進化だ。
「死とは生命の唯一最大の発明なのだ。変化を促すエージェントだから」とスティーブ・ジョブズは言っていた。
(“Death is very likely the best single invention of life. It is life's change agent.”)
National Geographic The Photo Ark: One Man's Quest to Document the World's Animals
- 作者:Sartore, Joel
- 発売日: 2017/03/07
- メディア: ハードカバー
ジョエル・サートレイによる動物の箱舟プロジェクト(Photo Ark)の紹介動画。