【番外】アル・ジャジーラのアジアドキュメンタリー'101 EAST'が面白い

書評と関係ない番外記事。

最近いちばん更新が楽しみなコンテンツの紹介。

リッチな中国人移民がバンクーバーの家賃を引き上げている、フィリピンの指名手配犯には賞金が懸けられている、韓国人は世界一の酒飲みでロシア人の2倍の量飲酒する・・

アル・ジャジーラが制作しているアジアについてのドキュメンタリーシリーズ'101 East'を見ると、そんなインプットが得られる。

カタールに本社を置く同局は中東のメディアというイメージが強いかもしれないけれど、世界各国に70以上の支局があってアジアもカバーしている。

Youtubeでも公開されているこのドキュメンタリーシリーズは2011年に放送開始されたようで、最新エピソード（16年8月中旬時点）は日本の恋愛事情についての特集である。他のヤバかった回と合わせて以下にまとめておく。

残念ながら日本語字幕はないけれど、どの回も映像だけ見ていても楽しめると思う。ではどうぞ。

日本で愛を見つけること

少子化や未婚率の上昇を背景に、メイドカフェやアイドルコンサートやドールコレクターや限界集落での街コンなどを取材したエピソード。いま並べた名詞で日本人ならなんとなく内容をイメージできそうな気がするが、そのイメージ通りの内容である。ちなみに、ニュー・トーキョー・ガバナー、ユリコ・コイケも登場してインタビューに答えている。取材する側も受ける側もフットワーク軽い。

以前このブログで紹介した↓アジズ・アンサリの「モダン・ロマンス」でも日本が大々的にフィーチャーされていたけれど、現代日本の恋愛事情（というか非・恋愛事情）は、日本人には食傷気味なネタかもしれないが世界の人に売れるコンテンツになるんじゃないかと思う。ネットフリックスやアマゾンの日本部門の人が、日本人向けに小説やマンガ原作のドラマを作るんじゃなくて、日本のbizarreな恋愛事情をドラマ化して世界に配信して儲けてくれればいいのにと思う。

中国のスーパー・リッチ・ガールズ

このエピソード最高すぎる。Crazy Rich Asiansなんて小説もあったりするけれど、それを地で行くウルトラ・クレイジー・ジェットセット・リッチな中国人女性たちの話。金持ちであることに負い目も照れもなくて、草原でピクニックするみたいに自然体でDiorの店を貸し切ってウン千万円のショッピングをしたりしている。後半の方で葛藤したり自分のビジネスを立ち上げる展開になるのだけど、前半がスゴすぎてあんまし頭に入ってこない。

フィリピンのバウンティ・ハンター

フィリピンの指名手配犯には賞金が懸けられている。彼らを狙うバウンティ・ハンター（賞金稼ぎ）たちは自らを「非公式な法の執行人」と呼ぶ。ハンターとして数々の実績を持つピーターさんは警察からも頼りにされて銃の所持が認められているそうな。フィリピンはアメリカ以外で唯一バウンティが法的に認められている国である・・ってアメリカにもあるのか。バウンティ・ハンターなんてブレードランナーとかスターウォーズだけの存在かと思ってた。22分過ぎあたりからのクライマックスが「おいおいマジかよ・・」という映像である（途中に再現映像も入っているがクライマックスは再現映像ではない模様）。

アル・ジャジーラは「まとも」なメディア

さて、余談だけど、アラブ系のメディアというだけでアル・ジャジーラは偏見を持たれているかもしれないが、彼らはとても「まとも」なメディアだと思う。

ここでいう「まとも」は中立とか公正とかいう意味ではない。彼らが誰からスポンサードされていて誰の意見を代弁しているのかはよく知らない。

ただ、彼らは自分たちのネットワークを駆使して取材をしてファクトを入手していると思う。そしてそのファクトの背景にある文脈を解説する。それっておそらくジャーナリズムの基礎体力かつコアスキルで、そのスキルが高いという意味で彼らはまともだ。

安易に日本のメディア批判とかはしたくないけれど、たとえばNHKなどを加えてマッピングすると、よりBBCに近いグローバルなメディアがアル・ジャジーラで、より朝鮮中央放送に近いローカルなメディアがNHKだと思う*1。単純な比較はできないが、Al Jazeera EnglishのYoutubeチャンネル登録者数が約100万で、NHK Worldの登録者数が約3万である（2016年8月時点）。

アル・ジャジーラ'101 East'はYoutubeで見られる毎週更新のドキュメンタリーシリーズ。上で紹介した回以外にも、イスラム教が多数を占めるマレーシアで格闘家になった女性の話とか、カザフスタンのヤバい観光政策の話とか、韓国の飲酒カルチャーの話とか、エッジが立ったエピソードがいっぱいあるのでオススメ。