未翻訳ブックレビュー

世界の本への窓 by 植田かもめ

知的好奇心の強い若者がいま何で情報収集しているのか見失っている話

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約3年間にわたって寄稿連載を続けさせてもらっていた「翻訳書ときどき洋書」の定期更新が終了となった。

 

 

「世界が広がるような海外の良書を紹介する」というコンセプトがこのブログで目指している事と完全にシンクロしていて、しかも選書は自由に任せてもらえていた。ぶっちゃけ、以前からブログに書いていた記事と大体同じ内容をお金をいただいて書けるようになったので、非常にありがたい場であった。

 

何よりも嬉しかったのは、純粋にこのブログに載せていた文章だけを見て連載の声をかけてもらえた点だった。肩書きも公開していない有象無象の人間を連載陣の並びに加えていただいた事には感謝しかない。連載の中からのオススメ記事はこの記事の末尾にもリンクしておく。

若い人はいまどうやって本に出会っているんだろう?

さて、本題。自分が40歳の中年になって、コロナ禍で人とムダ話をする機会が減った事もあり、それなりに知的好奇心があるような若い人がいま何で情報収集をしていてどこで本に出会っているのか、完全に見失っている。

 

少し世代をさかのぼって、何の話をしているか書いてみよう。小泉今日子がSpotifyでやっているポッドキャスト番組「ホントのコイズミさん」で、ネットの無い時代には「本は年の離れた大人に教えてもらうものだった」「大人の家に遊びに行くと、本棚にある本を勝手に見てワクワクしていた」といった主旨の話をしていた(松浦弥太郎との対談回より)。

 

で、自分が若かった頃には、そういう大人の存在にあたるものが、ネットの個人メディアだった。山形浩生が紹介している本を読んだり、スゴ本さんとか読書猿さんが紹介している本を読んでいた。

 

けれども、自分でブログを書いておきながら言うのも自虐的だけれど、個人ブログを読むのに時間を使っている人というのはかなり減っているだろう。私自身も減ってきている。

 

そうすると、いつの時代でも「自分の世界を広げたい」といった知的好奇心を持った若い人はたくさんいるとして、そういう人が、「ファスト&スロー」とか「サピエンス全史」とか「ティッピング・ポイント」とか「6度目の大絶滅」とか「マネー・ボール」とか「わたしを離さないで」とか「ザ・ロード 」とかに出会う場って、いまどこなのだろう?ちなみに、いま挙げた本は全て英ガーディアン誌の「21世紀の本ベスト100冊」からピックアップした。

 

ツイッターでフォローしている著名な人のオススメから本を知るとか、そんな感じなのだろうか?YoutubeとかインスタとかTik Tokにそういう場があるのだろうか?そういえばClubhouseってどこ行っちゃったんだろう?

 

ひとつあるのかなと思うのは、主に都心部かもしれないが、独立系の面白いリアル書店は増えていて、そういう場が本との出会いの場になっているのかもしれない。

参考:【INTERVIEW】いま本屋が増えている?! 本屋ライター和氣正幸に訊く、独立系書店の系譜 | StoryWriter

 

おまけ - 連載からの自選記事

話は戻って、「翻訳書ときどき洋書」の連載からのオススメ記事をひとつだけ挙げておく。まだ日本語版が出ていないヤンシー・ストリックラーの本だけど、ぜひぜひ多くの人に読んでいただきたい。