いつか宇宙人に人間について説明してみたい、または「エイリアン系」の本について
タトル・モリエージェンシーさんが世界の本棚からお薦めを紹介する「翻訳書ときどき洋書」への寄稿連載、更新しています。「人間を説明するマニュアルがずっと欲しかった」と語る自閉症の分子生物学者カミーラ・パンが著した"Explaining Humans"を紹介しています。
これ、自分が大好きな視点の本です。
「あたかも自分がエイリアンであるように、人間を外から観察して、考える」という視点で、勝手に「エイリアン系」と呼んでいます。記事の中でも紹介した精神科医のオリヴァー・サックスの「火星の人類学者」は、自分のオールタイムベスト本のひとつです(かなり昔の記事でも紹介しました -コミュニケーションに悩む全ての人にオススメの作家)。
SF小説やマンガや映画の中で、地球外の生命体が人間を学ぼうとするシーンも大好きです。ハインラインの「異星の客」などが典型例ですが(あれは火星で育った人間、という設定ですが)、特に好きなのは岩明均「寄生獣」の中でミギーが人間について読書して勉強しようとするシーンです。何気ないシーンですが、「他者について学ぶ」という、勉強の原点みたいなものに思えてなぜかグッときます。
自分が宇宙人に「人類について知りたいからなんか本を貸して」と言われたら何を貸すだろうな、とか妄想するのも楽しくて、以前サピエンス全史を紹介していた頃にそんなテーマでブックリストを作ってみたりもしました。ユヴァル・ノア・ハラリ自身もそんなテーマで選書をしています。
話をカミーラ・パンの本に戻すと、彼女の場合は機械学習の理論を通じて人間の意思決定を考えたり(「人間の方が機械学習のアルゴリズムよりも機械的な判断をしている事が多い」とか面白いです)、タンパク質のはたらきなど分子生物学のミクロな視点を人間の組織の動きに適用できないか考えたりしています。邦訳予定不明ですが(2020年3月時点)、エッセンスは上記の紹介記事からぜひどうぞ。
<連載バックナンバー>
#32 2020年のベスト洋書と翻訳書 (番外)
#30 「冷戦時代のケンブリッジ・アナリティカ」はいかに民主主義を「ハック」しようとしたか?
#28 「生き残ったアンネ・フランク」が語る、誰も奪えない「選択」の自由
#27 「ナウ・ミー」から「フューチャー・アス」へ。30年後の世界を変える青写真
#22 「ルーンショット」──“バカげて見えるスゴいアイデア”が世界を変える
#20 ケンブリッジ・アナリティカ事件の当事者が語る「民主主義をハックする」方法
#18 他人を信じてしまいがちな私たちが、知っておくべき理論とは
#17 人はなぜ笑顔の絵文字を添えるのか?─インターネットの言語学
#16 シリコンバレー最大の秘密と呼ばれた「1兆ドルのコーチ」
#15 ビル・ゲイツのおすすめ本がピンと来なかったので理由を考えた
#14 世界の未来は「アジア的」になる
#07 無知は力なり。トランプ政権が“偉大なアメリカ”を信じていられる理由
#06 培養肉を「クリーン・ミート」と呼ぶかどうかはこっちが決めたい
#05 役に立たない美しさ