【和訳】フランク・オーシャンの夏への愛を語る / Summer Remains
目次
書評じゃない番外記事。
フランク・オーシャンの歌詞を解説した3分ほどのWeb動画ニュースが面白かったので内容を和訳してみた。ついでに、Summer Remainsという未発表曲の歌詞も和訳してみた。
フランク・オーシャンの歌詞は俳句
本編に入る前にポイントを説明。このブログでも何度か記事にしているR&Bアーティスト、フランク・オーシャンの書く歌詞は、他のR&B・ヒップホップ系アーティストのものと全然違う。情景や心象を想像させる余白があって、俳句みたいな余韻を残す。
たとえばSuper Rich Kids/スーパーリッチキッズという曲がある。そこでは「金持ちで、遊んでいて、盛大なパーティーを開いている」といったことを一切直接的に説明しないで、いきなり"Too many bottles of this wine we can't pronounce"(名前も発音できないワインのボトルがいっぱい)と始める。その1ラインだけで、盛大なパーティーが前夜にあって翌朝ひどい二日酔いで目を覚ますとワインの空きボトルがテーブルにいっぱい、といった情景が想像できる。夏草や、つわものどもが、夢の跡。空きボトル、パーティー終わり、夢の跡。カリフォルニアの富裕層であるクソガキたちの生活が、平安貴族の爛熟やローマ帝国末期の頽廃に重なる超名曲。フランク・オーシャンは、田舎の奥の細道ではなく、ヤシの木が並ぶビーチやファッションショーのレッドカーペットを歩く芭蕉である。
以下のラプジことRap GeniusのWeb動画ニュースでは、「夏」という切り口で彼の歌詞を解説している。どんなに開放的(carefree)で、自分であること(to be yourself)を追求できても、必ず終わりが来てしまう夏である。
ではどうぞ。
なお、訳の正しさは一切保証しない。
和訳:フランク・オーシャンの夏への愛
Analyzing Frank Ocean's Love Of Summer Through His Lyrics | Genius News
フランク・オーシャンの夏への愛を歌詞から分析する
よい歌はリスナーの感情を呼び覚まします。では、ある作品たちが、ひとつの季節すべてを思い出させることはあるでしょうか。フランク・オーシャンの場合、夏への愛が何度も登場します。
"I, I, I know you gotta leave, leave, leave
"僕は、知ってる、君が、去るとTake down some summer time
夏の幕がおりるGive up, just tonight, night, night"
やめよう、もう、今夜で"(Self Control)
フランク・オーシャンの音楽は、奔放な夏と解放的な愛(the summer flings and carefree love)について語ります。一年で最も暑い季節です。
"She said, "I've had a hell of a summer, so, baby, don't take this hard
"彼女は言った。すごい夏だった、だから、深く考えないでBut maybe we should get an annulment, before this goes way too far"
結婚は無効にしましょう、深入りしないうちに"(American Wedding)
"This is joy, this is summer
"これが喜び、これが夏Keep alive, stay alive"
元気でいて、そのままで"(Skyline To)
夏の太陽の下の陽気な時間。
それはオーシャンの音楽にあたたかさと安らぎをもたらします。
"Sands white on my tan feet
"日焼けした足元に白い砂Colosseum in the back seat
バックシートのコロセウムStraw hut where the beach be
わらぶき小屋があるビーチはLike screen saver when your Mac sleep"
まるでMacのスクリーンセーバーみたいな景色"(Blue Whale)
"In the wake of a hurricane
"ハリケーンの後Dark skin of a summer shade"
黒い肌、夏の日陰"(Pink + White)
"Give me Bali beach, no molly, please
"バリのビーチがいい、モーリー(訳注:MDMAの一種)なんかいらないPalm, no marijuana, trees
ヤシの木がいい、マリファナよりもYour hickies on my aorta
僕の動脈に君のキスマークand tattoos you could only see"
脱いだときだけ見えるタトゥー"(Sunday)
フランク・オーシャンの人物像は彼のセクシュアリティとともに語られます。5年前(訳注:2012年)の7月に公開した手紙に彼はこう書きました。
"4 summers ago, I met somebody. I was 19 years old. He was too.
"4度前の夏、僕はある人に会った。僕は19歳。彼も。We spent that summer, and the summer after, together. Everyday almost."
僕らはその夏を過ごし、次の夏も一緒だった。ほとんど毎日。"
気温が華氏80度(訳注:約27℃)を超えて、太陽が頬に照りつけるときにだけ存在するような情熱を彼は表現します。
"One winter morning I went for a drive
"ある冬の朝、僕はドライブに出たI stopped somewhere between June & July
6月と7月のあいだのどこかに着いたI love these warmer days"
あたたかい季節が好きだ"(I Need It)
‘Nostalgia, Ultra’というアルバムを除くと、彼がリリースした作品はどれも夏に発表されています。フランクは最初のアルバムを’Channel Orange’と名付けました。最初に恋に落ちた夏を思い出させるものとして。自分のアイドルであるファレルと同じように、彼はある色を見ていました。オレンジ色です。
‘Blonde’を制作していたときには、ビートルズやビーチボーイズのような楽天的な夏(a carefree summer)のイメージにインスパイアされたとMTVに語っています。
"So why see the world, when you got the beach
"なぜ世界なんか見る、ビーチにいるのにDon’t know why see the world, when you got the beach"
なぜ世界なんか見るんだ、ビーチにいるっていうのに"(Sweet Life)
未発表曲のうちで最もよく知られた曲である”Summer Remains”では、9月の終わりの太陽のような、消え行く愛について語っています。
"Not even the palm trees
"ヤシの木でさえも、Could save us from the flames
僕らを炎から救えないSummer remains
夏の名残りOh, Summer remains"
取り残された夏"(Summer Remains)
フランクにとっても、学校に戻る子どもや金曜に仕事をする大人たちにとっても、その季節はいつもすぐに終わってしまいます。
"Solstice ain't as far as it used to be
"夏至はもうそんなに遠くないIt begins to blur, we get older (Blur!)
消えかかっていて、僕らは年をとる(消えていく!)Summer's not as long as it used to be"
夏はもうそんなに長くない"(Skyline to)
フランク・オーシャンの音楽は、自己の解放を表現していて、それは夏という季節に完璧に合います。なぜなら、1年で一番あたたかい季節ほど、自分自身でいられる(to be yourself)時はないのですから。
Genius NewsのJacques Morelが、音楽の裏にある意味と情報をお伝えしました。ピース。
(出典:Analyzing Frank Ocean's Love Of Summer Through His Lyrics | Genius News - YouTube)
和訳:Summer Remains
*2012年にホームビデオとして投稿された曲。2017年現在、正式に発表されたスタジオ録音バージョンはなし
Summer Remains
夏の名残り
[Verse 1]
My right hand to God
右手を神に
Left hand holding the jewels
左手にはジュエル
And I'm swearing up and down
誓いを立てて
I'm cursing out the moon
呪いは月に
Tide stole my youth
潮の流れが僕の青春を洗い去った
The creases in my brow ain't tan lines
眉間のシワは日焼けのラインじゃない
Saltwater swole my eyes
塩水で目がはれる
The sun's burning black and blue
太陽が黒く青く燃えている
Too cold this side of June
6月のこちら側は冷たすぎる
[Refrain 1]
It ain't natural
自然なことなんかじゃない
[Verse 2]
Right hand in yours
右手を君に
Left hand holding the juice
左手にはジュース
When that jungle flower blooms
ジャングルの花が咲くときは
Better leave it in the ground
そっとしておくのがいい
Don't try to cut it out
切り落とさないで
The creases in your brow ain't tan lines
眉間のシワは日焼けのラインじゃない
Saltwater swole my eyes
塩水で目がはれる
The sun burned black and blue on your green eyes
太陽が黒く青く燃えている、君の碧い目に
Too cold this side of June
6月のこちら側は冷たすぎる
[Refrain 2]
That ain't natural
自然なことなんかじゃない
[Bridge]
I'll rebel, I'll rebel
反抗しよう、反抗しよう
But this ain't natural
でも、これは自然なことなんかじゃない
I'll take care, I'll take care
僕に任せて、僕に任せて
If this ain't going well
これがうまくいかないなら
I'm no match for you
僕は君にふさわしくない
This isn't hard to tell
言いにくいことじゃなくて、
That it ain't going well
うまくはいかないだろう
[Verse 3]
When we're under the palm trees
ヤシの木の下にいるとき
Thinking heaven must be
天国はきっとこんな場所だと思う
Somewhere under these palm trees
ヤシの木の下のどこかにある場所
With all the hell we're raising
ひどいことがあっても
At least we had the palm trees
僕らにはヤシの木があって
To shade us from the ray beams
紫外線から守ってくれる
But Not even the palm trees
でも、ヤシの木でさえも、
Could save us from the flames
僕らを炎から救えない
Summer remains
夏の名残り
Oh, Summer remains
取り残された夏
Oh yeah, summer remain
夏の名残り
Summer remain
取り残された夏
(出典:Frank Ocean – Summer Remains Lyrics | Genius Lyrics)
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