未翻訳ブックレビュー

Lost-In-Translation Book Review. 日本語版発売を待たずに本を紹介するページです

未来が見える未訳本カタログ2019

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毎年恒例、面白そうな未訳本の私的セレクト記事である。

 

昨年から8月に公開することにしたので、個人的な夏休みの宿題みたいなものになりつつある。

 

今回で早くも通算4年目で、昨年のこの記事では「邦訳が一番出てほしい本!」としてロスリングの「ファクトフルネス」を紹介してたなーとか、その前の年はユヴァル・ノア・ハラリの「ホモ・デウス」にかなりくらっていたとか、振り返ってみると面白い。

 

この記事で紹介するカテゴリーは例年と同じく以下の3つである。

  • Fiction & Art / フィクションと芸術
  • Business & Society / ビジネスと社会
  • Science & Technology / テクノロジーと科学

 

ちなみにもう日本語版が出たのでこのリストには入れていないが、この夏に読むべき本を一冊だけ挙げるなら、別の記事で先日紹介したリウ・ツーシンの中国SF「三体」である。冷房の効いた部屋で読んでいても脳が何度も焼かれるほどの熱量。一気読みをオススメする。

 

ではリストをどうぞ。

 

目次

Fiction & Art  

Fly Already: Stories (English Edition)

Fly Already: Stories (English Edition)

 

当ブログいちおし、想像力を武器に自分と世界を笑うイスラエルの「超短編作家」エトガル・ケレットの新作!

10月に来日が予定されていて、私も特設サイトにコメントを寄稿させてもらいました。

エトガル・ケレット来日特設サイトにコメントを寄せました

エトガル・ケレット&シーラ・ゲフェン 2019来日サイト on Strikingly

 

The Warehouse: A Novel (English Edition)

The Warehouse: A Novel (English Edition)

 

ひとことで言うと「Amazonを舞台にしたディストピア小説」である。米国一の富豪である経営者が率いる巨大企業"Clould"では、自分たちはラッキーだという洗脳を受けながら、労働者たちが低賃金ではたらき続ける。あれ、小説じゃなくてノンフィクションなんじゃ・・

  

Serotonin: A Novel (English Edition)

Serotonin: A Novel (English Edition)

 

ミシェル・ウエルベックの新作の英訳版。

「自由貿易とEUを批判する元モンサント勤務の農業エンジニア」にして、「過去に寝た女性たちを性的魅力でランキング付け」する白人中年男性、というクズ中のクズが主人公の小説で、タイトルはセロトニン(!)。相変わらずのヤバみ。

 

Machines Like Me: A Novel (English Edition)

Machines Like Me: A Novel (English Edition)

 

「贖罪」のイアン・マキューアン新作。架空の1980年代ロンドンを舞台に、人間のカップルとロボットとの三角関係を通して「何が人間を人間たらしめているか」を描く。

 

Mouth Full of Blood: Essays, Speeches, Meditations

Mouth Full of Blood: Essays, Speeches, Meditations

 

つい先日(19年8月5日)他界したトニ・モリソンが2月に発売した、エッセイ、講演録などを集めた断想集。タイトルはその名も「血だらけの口」。

 

Business & Society  

AI Superpowers: China, Silicon Valley, and the New World Order (English Edition)

AI Superpowers: China, Silicon Valley, and the New World Order (English Edition)

AI世界秩序 米中が支配する「雇用なき未来」

AI世界秩序 米中が支配する「雇用なき未来」

去年のベスト本にも挙げた、元グーグルの中国法人代表でもある李開復(カイフー・リー)による本書。ついに日本語版が出る!

noteの連載で以前採り上げたので、エッセンスを知りたい人はこちらをぜひどうぞ↓

AIで中国は米国に勝つ。ただし本当の競争は別にある(植田かもめ)|翻訳書ときどき洋書|note

 

The Future Is Asian (English Edition)

The Future Is Asian (English Edition)

 

シンガポール在住の地政学の専門家パラグ・カンナによる、「アジアのアジア化」そして「世界のアジア化」を説く一冊。

こちらもnoteの連載で以前採り上げたのぜひどうぞ↓

世界の未来は「アジア的」になる(植田かもめ)|翻訳書ときどき洋書|note

 

Talking to Strangers: What We Should Know about the People We Don't Know (English Edition)

Talking to Strangers: What We Should Know about the People We Don't Know (English Edition)

マルコム・グラッドウェルの新作!

・・というだけで個人的には「買い」なのだけど、本書のテーマは、見知らぬ他人とのコミュニケーションがなぜうまくいかないかを外交などの古今東西の事例を見ながら考察するというタイムリーなものであるようだ。

 

Range: Why Generalists Triumph in a Specialized World (English Edition)

Range: Why Generalists Triumph in a Specialized World (English Edition)

 

スポーツや芸術、科学の分野で成功を収めたいならば、小さな頃から専門的な能力を磨くべき?本書はこれに異を唱える。一見非効率に思える「多様なチャレンジ」こそ、長期的な成功をもたらす。最新研究を基にした「ジェネラリストのススメ」。

 

 

This is Not Propaganda: Adventures in the War Against Reality

This is Not Propaganda: Adventures in the War Against Reality

 

これはプロパガンダではない。情報が武器ならば、あらゆる「オピニオン」は戦争行為だ。旧ソ連出身の在英ジャーナリストによる、リアリティが「存在するもの」ではなく「作るもの」になった時代の報告。 

  

Science & Technology 

Because Internet: Understanding the New Rules of Language (English Edition)

Because Internet: Understanding the New Rules of Language (English Edition)

 

Wiredなどに寄稿している言語学者による「インターネットと言語」に関する概説書。

ネットスラングや絵文字など、独自の言語体系がネットに存在することを私たちは知っている。本書は、そもそもなぜそうした独自の言語が存在するかを解き明かす、ありそうでなかった一冊である。研究対象を日本語にしたリメイク版もぜひ読んでみたい。

 参考:インターネットは書くことをより良いものにしている? - YAMDAS現更新履歴

 

幻覚剤を通じて考える、脳と心の関係。「欲望の植物誌」「雑食動物のジレンマ」など、出す本どれもこれも面白いジャーナリスト、マイケル・ポーランの新作。

これもnoteの連載で紹介した↓

幻覚剤は「ダメ。ゼッタイ」ではない?(植田かもめ)|翻訳書ときどき洋書|note

 

The Uninhabitable Earth: Life After Warming (English Edition)

The Uninhabitable Earth: Life After Warming (English Edition)

 

生息できない地球。

気候変動の影響は、海面上昇などのわかりやすいところでだけ進行しているわけではない。米国ジャーナリストによる最新報告。

 

The Age of Living Machines: How Biology Will Build the Next Technology Revolution (English Edition)

The Age of Living Machines: How Biology Will Build the Next Technology Revolution (English Edition)

 

 MIT元所長の脳神経学者による、生物学がいかにテクノロジーを変えるかの展望。ウイルスを電極にしたバッテリー、たんぱく質でできた浄水フィルター、がん細胞を直接攻撃するナノ粒子・・20世紀が物理学の発見を様々な領域に応用したように、生物学の発見も他の領域に応用される?

 

Nine Pints: A Journey Through the Mysterious, Miraculous World of Blood (English Edition)

Nine Pints: A Journey Through the Mysterious, Miraculous World of Blood (English Edition)

 

医療現場から「純血」という思想をめぐる文化まで、 「血液」をテーマにたどる人間の歴史。 

 

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以上終わり。

読んで面白かった本は、このブログで紹介するか、いくつか既にリンク済みのものと同じように寄稿連載で取り上げる予定↓

 

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