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未翻訳ブックレビュー

Lost In Bookish Rambles. 日本語版発売を待たずに本を紹介するページです

俺のグラミー/アカデミー/ピュリッツァー賞2016



去年も書いた、年に一度の自己満足の祭典。
2016年に気に入った音楽と映画と本を紹介する。

 

今年はあんまり厳選しないで、ぶわーっといっぱい作品を並べてみる。音楽が10作、映画が7作、本が20冊ある。ページを分けた方がいいのかもしれないけれど、ASKAのブログみたいに長くてなんか禍々しい記事を作ってみたかった気もするのでそのままにしておく。

 

自分にとって音楽や映画や本ってカレンダーや日記みたいなもので、「あの仕事をしていた頃にこの音楽よく聞いていたな」とか「あの人とあのレストラン行った帰りにこの映画見たな」とか「あの飲み会なじめなくて二次会行かずに帰ってこの本読んで寝たな」とかの記憶とセットになっている。

 

なので、この下にいっぱい並べるリンクは、将来の自分にたどらせる記憶のパンくずであり、連想ゲームのヒントであり、歳月に貼った付箋である。デスクやモニターに貼られた付箋と同じで、他人が見ても何のメモかよくわからないかもしれないが自分には重要なアイテム。

 

ではどうぞ。

なお、それぞれ連番を振っているけれど、特に順位とかを意味しているわけでない。

目次

 

 

俺のグラミー賞

1. Lee Lang - 神様ごっこ

神様ごっこ

韓国の才能イ・ラン。記事にも書いたけれど、セルフィーとフォローとシェアの「人に嫌われたら終わり」時代に、「死と哲学についてのレコード」をぶっこんでくる根性がホントすばらしい。

 

2. Glim Spanky - 話をしよう

話をしよう

大半のJポップの歌詞って、願いは届く、愛は叶う、みたいに「思ってることは伝わって当然」というスタンスなのが苦手なのだけど、この曲の歌詞は「ちゃんと言わないと何も伝わらない」前提でとても良いと思った。

 

3. Kanye West - The Life of Pablo

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嫌われ聖パウロの一生。カニエがカニエであるためにカニエ続けなきゃならない、と歌っている(ように聞こえる)アカペラの'I love Kanye'など、自分 and/or 神への讃歌集。

 

4. Anderson Paak - Malibu

Malibu

The New L.A.って感じ。L.A.行ったことないけど。

 

5. Rihanna - Anti

Anti (Deluxe, Explicit)

わーわーわーわーわー。病んでいて大好き。

 

6. David Bowie - Blackstar

Blackstar

発売日に聴いてシビれて「69歳でこんなの作るのすごい」と友人に話していたら2日後に亡くなってしまった。

 

7. Frank Ocean - Blonde

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記事にして紹介した。I'll mean something to you...

 

8. 坂本慎太郎 - できれば愛を

できれば愛を(初回限定盤)

 

記事にして紹介した。ディスコは君を差別しない。

 

9. A Tribe Called Quest - We Got It From Here… Thank You 4 Your Service

10. Solange - A SEAT AT THE TABLE

We Got It From Here… Thank You 4 Your Service 

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この辺りは'各自の生活を美しくしてそれに執着する'ための2016年のブラックミュージック'という記事にまとめて紹介した。

 

 

俺のアカデミー賞 

1. ズートピア

ロジカルによくできた映画すぎて、感動すると同時に、ディベートで完全に論破されたような気持ちになった。

 

2. Brooklyn

ある意味ズートピアとも同じ「移民モノ」映画。どこかを離れたり何かを選択するということは、誰かを幸せにして誰かを不幸にすること。誰もを幸せにできないなら、どういう理由で誰を幸せにすべきなんだろう。

 

3. Fake

森達也監督15年ぶりの新作。佐村河内守のドキュメンタリー。豆乳とケーキと猫ばかり出てくる映画で、いまメディアで叩かれているあの人やあの人にも、彼らにとっての豆乳やケーキや猫がきっとあるんだろうなと思わされた。

 

4. ヒメアノール

古谷実の原作とはだいぶ変えていたけれどスゴかった。前半と後半がガラッと別の映画になる構造で、その「一寸先は闇」感が現実の人生みたいでとても好きだ。

 

5. PK

インド映画。同じ監督の「きっと、うまくいく」という前作が大好きだったので見に行った。神と人とのディスコミュニケーションを扱った、ある意味「沈黙」のインド版(誰ひとり黙らないけれど)。

 

6. Sully

実話を基にしたクリント・イーストウッド監督作。記事にしてサン・テグジュペリの小説とともに紹介した。なんかイーストウッド映画は毎回タイトで無駄がなくて、達人の書家が一筆で作品を仕上げてしまうのを見ているみたいな気持ちになる。

 

7. この世界の片隅で

各所で絶賛だけど、評判に違わずリアルガッデムよかった。全てが奪われても想像力と笑いだけは誰にも奪えない。前半にモノが豊かな時代を細かく描写しているので(少年時代の思い出や、一瞬だけ映る大正ロマンの時代など)、戦争で物資がだんだん不足していくのってこんな感じなんだと後半恐くなった。

 

 

俺のピュリッツァー賞

気に入った本たち。「外部へ」「内部へ」「過去へ」「未来へ」の4つに分類した。

なお、このブログで取り上げた本は別記事に改めてまとめる予定。→まとめた!

 

外部へ

1. ジュンパ・ラヒリ - べつの言葉で

べつの言葉で (新潮クレスト・ブックス)

べつの言葉で (新潮クレスト・ブックス)

 

インド移民2世のアメリカ人作家が、イタリアに移住してイタリア語で書いたエッセイ(の日本語訳)。「子どもの体重が増えていくのを感じるように」あたらしい言葉が自分の一部として日々積み重なっていく喜びを描いた作品。留学する人とか、あたらしい何かを始める人に贈りたい小編。

 

2. イリヤ・トロヤノフ - 世界収集家

世界収集家

世界収集家

 

サンスクリット語でカーマ・スートラを学び、アラビア語でコーランを覚え、アフリカ内陸の言語でヴードゥー(呪術)に触れた、18世紀の大英帝国軍人リチャード・フランシス・バートンの一代記。[amazonに書いたレビュー]

 

3. ピョートル・ワイリ - 亡命ロシア料理

亡命ロシア料理

亡命ロシア料理

 

ロシア文学の食事シーンはきまってマズそうなんて誰が決めた?米国に亡命したロシア人たちの饒舌エッセイ集。

いい料理とは、不定形の自然力に対する体系(システム)の闘いである。

 

4. オリヴァー・サックス - 色のない島へ: 脳神経科医のミクロネシア探訪記

色のない島へ: 脳神経科医のミクロネシア探訪記 (ハヤカワ文庫 NF 426)

色のない島へ: 脳神経科医のミクロネシア探訪記 (ハヤカワ文庫 NF 426)

 

昨年亡くなった脳神経科医のオリヴァー・サックスが、住民の多数が先天的な色盲であるミクロネシアの島をめぐる旅行記。ダーウィンと旅するのってこんな感じなのかも。

つまるところ、私たちは三人とも心の中ではいまだにヴィクトリア朝の博物学者のままなのだろう。

 

 

5. エラ・フランシス・サンダース - 翻訳できない世界のことば
6. 誰も知らない世界のことわざ

翻訳できない世界のことば

翻訳できない世界のことば

 

 

誰も知らない世界のことわざ

誰も知らない世界のことわざ

 

ことばとはコミュニティの記憶。ことばの向こうに人と暮らしが見えるイラスト絵本。誰かにプレゼントしたり、ひとと一緒に読みたくなる本。記事にして紹介した。

 

7. 管啓次郎 - 狼が連れだって走る月

狼が連れだって走る月 (河出文庫)

狼が連れだって走る月 (河出文庫)

 

詩人・翻訳者による1994年作。「移住/混血/多言語併用」そして「砂漠/歩行/土着」というふたつの三角形をめぐる紀行断想集。序文でよしもとばななが「これを書いている人の豊かな人生はこの本よりも大きいのだ」と書いている。そう思わせる本って好きだ。

 

8. 高野秀行 - 謎のアジア納豆: そして帰ってきた〈日本納豆〉

謎のアジア納豆: そして帰ってきた〈日本納豆〉

謎のアジア納豆: そして帰ってきた〈日本納豆〉

 

日本の納豆は味も種類もひとつしかなくてつまらない・・。信頼と実績の「辺境作家」高野秀行による、納豆ダイバーシティをめぐる冒険。納豆らしさ、へのこだわりが、日本の納豆を不自由にしている!

 

 

内部へ

9. トルストイ - イワン・イリイチの死/クロイツェル・ソナタ

イワン・イリイチの死/クロイツェル・ソナタ (光文社古典新訳文庫)

イワン・イリイチの死/クロイツェル・ソナタ (光文社古典新訳文庫)

 

ありふれた男のありふれた死を描く短編。モラルについての本を紹介した記事からのつながりで読んだ。形だけうまく保っている人間関係が行き着く先の恐怖・・。[amazonに書いたレビュー]

 

10. イーユン・リー - さすらう者たち

さすらう者たち (河出文庫)

さすらう者たち (河出文庫)

 

大好きな作家のイーユン・リーが今年来日した(イベントのレポ記事書いた)。未読だった処女長編を読んだけれどこれもスゴかった。1979年の中国の地獄共同体。国家の敵を処刑する「まともな」大人たちに、誰からも必要とされない気狂いの男女がプロテストする。

二人とも最初は子供で、世間にとって用のない存在だったのだが、お互いを得て半日のうちに成長し、世間など必要としない男と女になっていた。

 

11. エトガル・ケレット - あの素晴らしき七年
12. 突然ノックの音が 

あの素晴らしき七年 (新潮クレスト・ブックス)

あの素晴らしき七年 (新潮クレスト・ブックス)

 

 

突然ノックの音が (新潮クレスト・ブックス)

突然ノックの音が (新潮クレスト・ブックス)

 

イスラエルの作家エトガル・ケレット。本を読んでいて作家をこんなに友達みたいに感じたのって中学高校のとき以来かも。いっぱい記事を書いて激プッシュした↓

 

 

過去へ

13. フェリックス・マーティン - 21世紀の貨幣論

21世紀の貨幣論

21世紀の貨幣論

 

個人的に大好きな本のタイプに「通説くつがえし本」というのがあり、これもそのひとつ。物々交換の時代なんてなかった?マネーとは交換価値、ではない?歴史を通じて、マネーとは何かを定義する本。

 

14. ユヴァル・ノア・ハラリ - サピエンス全史

サピエンス全史 上下合本版 文明の構造と人類の幸福

サピエンス全史 上下合本版 文明の構造と人類の幸福

 

記事にして紹介した。アフリカの片隅で地味に暮らしていたチンパンジーはなぜここまで「増長」できたのか?イスラエルの歴史家による人類史。

 

15. イアン・レズリー - 子供は4000回質問する

子どもは40000回質問する  あなたの人生を創る「好奇心」の驚くべき力

子どもは40000回質問する あなたの人生を創る「好奇心」の驚くべき力

 

好奇心をもつのはいいこと?でも、目の前の課題やタスクに集中するためには実は好奇心はジャマになってしまう。中世では知ろうとしなくていいことを知ろうとする好奇心は「悪いもの」だった。好奇心の維持と発揮にはコストが伴うのだ。[amazonに書いたレビュー]

 

 

未来へ

16. 野口悠紀雄 - 仮想通貨革命

仮想通貨革命---ビットコインは始まりにすぎない

仮想通貨革命---ビットコインは始まりにすぎない

 

ドン・タプスコットのブロックチェーン・レボリューションという本を紹介したときにブロックチェーン関連の本を幾つか読んだけれど、この本はマクロな経済史からミクロな要素技術の説明まで整理されていて、野口悠紀雄やっぱすごいと思った。

 

17. Yuval Noah Harari - Homo Deus 

Homo Deus: A Brief History of Tomorrow

Homo Deus: A Brief History of Tomorrow

 

記事にして紹介した。「サピエンス全史」のユヴァル・ノア・ハラリ最新作の未来予測本。今年一番「この本のビジョンすごい」と震えた。「民主主義よりもっと良い仕組みができちゃうかもよ」と真正面から説く本ってはじめてだった。

 

18. 矢野和男 - データの見えざる手 

データの見えざる手: ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則

データの見えざる手: ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則

 

ウェアラブルセンサは人間・組織・社会の法則を理論化できるか。上のハラリ"Homo Deus"で「民主主義(とそれを支える人間主義)を置き換えるのはデータ主義」と語られているのだけど、人文科学が定性的に扱ってきた「心の問題」を脳科学が定量化しつつあるように、ぐにょぐにょと定性的なことを言ってきた社会科学もデータ分析によって定量化されて用済みになってしまうのかも。とこの本を読んで思った。

 

このあたりは来年追いかけてみたい話で、そのハラリが2016年のベスト本のひとつに挙げていた、Weapons of MATH Destruction: How Big Data Increases Inequality and Threatens Democracy(大量破壊「数学」兵器:ビッグデータはいかに格差を拡大し民主主義を脅かすか)とか読んでみる予定。

 

19. イーライ・パリサー - フィルターバブル

フィルターバブル──インターネットが隠していること (ハヤカワ文庫NF)

フィルターバブル──インターネットが隠していること (ハヤカワ文庫NF)

 

'I Hate the Internet'という小説を紹介したときに関連本として読んだ。アルゴリズムが高度になるほど不透明なバブルに覆われるインターネット。

「問題は、両者(注:グーグルとフェイスブック)とも、関連性の高いターゲット広告を収益源としていることだ」

 

20. 水野学 - 「売る」から「売れる」へ 

「売る」から、「売れる」へ。 水野学のブランディングデザイン講義

「売る」から、「売れる」へ。 水野学のブランディングデザイン講義

 

「センスとは、集積した知識をもとに最適化する能力である」  

じつはこの仕事は「デザインを扱う人たちには、ある覚悟が求められている」と教えてくれているということです。それは、なにか。「正しさをつらぬく覚悟」です。

・・仕事って、正しさをつらぬけなくして妥協を迫る各種の制約(お金、スキル、時間etc..)との戦いだと思う今日この頃。

 

 

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以上おわり。

ちなみに去年はこんな感じだった↓