未翻訳ブックレビュー

Lost In Bookish Rambles. 日本語版発売を待たずに本を紹介するページです

FICTION & ART

【抄訳と雑感】ゼイディー・スミスがSNSを遠ざける理由

小ネタ記事。 英国の作家ゼイディー・スミスがソーシャルメディアについて語った英ガーディアン誌の記事を抄訳した。管理人の雑感付き。短いので、気に入ったらぜひ原記事も読んでいただきたい。ではどうぞ。

【和訳】フランク・オーシャンの夏への愛を語る / Summer Remains

目次 フランク・オーシャンの歌詞は俳句 和訳:フランク・オーシャンの夏への愛 和訳:Summer Remains 関連過去記事まとめ 書評じゃない番外記事。 フランク・オーシャンの歌詞を解説した3分ほどのWeb動画ニュースが面白かったので内容を和訳してみた。つい…

戦争はいつも海の向こうで始まるか - American War by Omar El Akkad

Omar El Akkad - American War 2017/07/17 初出 2017/08/25 日本語版発売につき更新 オマル・エル=アッカド「アメリカン・ウォー」として2017/8/29発売 2074年、第2次南北戦争勃発。 本書Amrican Warは、中国とイスラムが2大勢力となった20世紀後半の世界で…

ちょっと今から人間やめてくる -「すごい物理学講義」とホモ・デウスの話

Carlo Rovelli - Reality Is Not What It Seems: The Journey to Quantum Gravity カルロ・ロヴェッリ - すごい物理学講義 人間が人間であることはなんてすばらしくて、人間が人間でしかないことはなんてショボいのだろう。 以前「未来が見える未訳本カタロ…

ミチコ・カクタニと、ルー・リードの、テジュ・コールのニューヨーク

目次 ミチコ・カクタニについて イントロ訳:ルー・リードへの追悼文 イントロ訳:テジュ・コール「オープン・シティ」のレビュー おわりに ミチコ・カクタニについて Michiko Kakutaniという人がいる。日系2世の米国人である彼女は、おそらく英語圏では世界…

ゆるふわギャングと好奇心

ゆるふわギャング - Mars Ice House 書評じゃない番外記事。 "Escape To The Paradise"という曲を聴いて以来、ゆるふわギャングが好きだ。おっさん向け音楽雑誌とかにありそうな言い回しをすると、これって「2017年の'ナイトクルージング'」なんじゃないかと…

ドイツ映画「ありがとう、トニ・エルドマン」が描くグローバルビジネスというサブカルチャー。そして、ラストダンスは私に

【予告編】映画『ありがとう、トニ・エルドマン』 2017年のアカデミー外国語映画賞にもノミネートされたドイツ映画「ありがとう、トニ・エルドマン」がめちゃくちゃ良かった。 簡単にあらすじを説明すると、グローバル企業でキャリアを重ね故郷のドイツを離…

フランク・オーシャンは恋人をお前と呼ぶか - 翻訳における人称の屈折や揺らぎについて

小ネタ記事。英語の一人称や二人称を日本語にどう訳すかは複雑になりつつあって、それは「男らしさ」や「女らしさ」といった概念が揺らいでいることにも関係しているのではないか、という説。 前の記事でもちらっと紹介した、米国社会で黒人がどう生きるかを…

XにおいてYであることについての本(そして自分語りはなぜつまらないのか論)

Omar Saif Ghobash - Letters to a Young Muslim 仮説。世の中のエッセイはすべて「XにおいてYであること」についての文章であると分解できる。 Xは外部環境のことで、時代や国や所属する組織や家族などを指す。 Yは内部環境のことで、性別や人種や年齢や職…

NYタラレバ娘、あるいは、大人になれば - All Grown Up by Jami Attenberg

美大に行って、嫌いになって、中退をして、ニューヨークへ。(You're in art school, you hate it, you drop out, you move to New York City.) そんな書き出しで始まる本書All Grown Upの主人公アンドレアは、40歳になろうとしている独身女性である。 ある…

K-POPでも韓流ドラマでもない、韓国の文学と音楽と映画

なんか気が付いたら韓国の作品がすごい。 まとめてみた。 目次 ハン・ガンの文学 イ・ランの音楽 ナ・ホンジンの映画 まとめ:ヘル朝鮮

彼や彼女を好きになれるかはどうでもいい

小ネタ記事。 個人的に「キャラ萌え」という文化に昔からあまりなじめないのだけど、前の記事↓で紹介したイーユン・リーのエッセイ本に似たような話を見つけた。

地獄では死が希望になる - イーユン・リー初エッセイ本

Dear Friend, from My Life I Write to You in Your Life by Yiyun Li 「あなたの気持ち、分かるよ」 「あなたのためを思って言っている」 「ネガティブに考えないでいい事に目を向けて」 そんな言い方をされて、嬉しくなるのではなく、イラっとしたり不快に…

【和訳】Chanel by Frank Ocean

フランク・オーシャンが今月(2017年3月)発表した新曲「シャネル」の歌詞を勝手に対訳した。 彼のBlond(e)というアルバムは「両義性(ambiguity, duality)」がテーマ、と以前の記事で書いたけれどこの曲もその延長線上にある。 'See on both sides like Chan…

現実ばかりがリアルじゃない - 4321 by Paul Auster あと、騎士団長殺し by 村上春樹

Paul Auster - 4 3 2 1: A Novel 20世紀最初の日、東欧からひとりの移民が大西洋を渡った。ニューヨークのエリス島で入国の受付を待つ間、ロシア人の仲間が話しかけてくる。ここでは名前を変えた方がいい、アメリカでの新しい人生のために、新しい名前を名乗…

黒い大統領の8年のダンス -(後編)オバマと踊った音楽と時代

*前編のラジオ番組風茶番↓からの続き 「俺たち大丈夫:人種と新たなる隔離について」(ジェフ・チャン著)(未訳) 目次 さよなら、音楽好きの大統領 おまけ1:ファクトチェック・オバマ おまけ2:オバマの8年にリリースされたブラック音楽8選

黒い大統領の8年のダンス -(前編)カウントダウン・オバマ

「ヒップホップは死んじゃいない。ホワイトハウスで生きている」(サンフォード・リッチモンド著)(未訳) やあみんな、お待ちかね!オバマのゴールデン・ヒッツを振り返る、カウントダウン・オバマの時間だよ! お相手は僕、DJバリー(Barry)と、 MCミー…

書くことは、失敗すること - Ta-Nehisi Coates on Writing

「私のすべての作品において、失敗はおそらくもっとも重要な要素です。」"Failure is probably the most important factor in all of my work." 「書くことは、失敗することだからですー何度も何度も、嫌というほど。」"Writing is failure. Over and over a…

カタルシスより笑い - エトガル・ケレット未訳短編集

「あんたらが任務にあたるとき、天国で70人のエロい処女が待っていると教えられるってホント?」 「ホントだよ」ナッサーは言った。「それで実際に俺が手にしたものを見てみろよ。ぬるいウォッカだ。」 自殺した人間だけが行き着く世界のとあるバーで、自爆…

'各自の生活を美しくしてそれに執着する'ための2016年のブラックミュージック

"All you Black folks, you must goAll you Mexicans, you must goAnd all you poor folks, you must goMuslims and gays, boy, we hate your waysSo all you bad folks, you must go" (黒人たちめ、出て行けよメキシカンども、出て行けよ貧乏人め、出て行…

イ・ラン「神様ごっこ」とミランダ・ジュライ - Playing God by Lee Lang

「すごい!神!」「神だw」 誰かと話したりネットのコメントを見ていて最近思うのだけど、日本語の「神」という言葉の使われ方って、いつのまにか英語の'Oh my God!'とあんまり変わらなくなっている気がする。上の例はまんま「オーマイガ」に置き換え可能で…

プロは奇跡を起こさない - 「ハドソン川の奇跡」と「夜間飛行」

御年86歳のクリント・イーストウッド監督の新作映画「ハドソン川の奇跡」を観た。ニューヨークのハドソン川にUSエアウェイズ便が不時着して世界中でニュースとなった2009年の出来事を描いた本作は、アクション映画でもパニック映画でもなかった。どんな映画…

ぼくが消えないうちに - The Imaginary by A.F. Harrold

忘れられ、消えてなくなる存在が主人公の児童書。本書の主人公ラジャーは「イマジナリー・フレンド」である。少女アマンダの空想のなかに存在する男の子だ。

【追記あり】Nikes by Frank Ocean

2016/9/18:この記事はもともと歌詞対訳と簡単なコメントだけを載せていたが、いろいろと余談を語りたくなったので追記をした 鬱くしい 追記1:BlondでありBlondeでもある両義性 追記2:Kohhと似た固有名詞の使い方 追記3:異界の声としてのフィルターボ…

翻訳できない世界のことば - Lost In Translation

このブログは未翻訳の洋書を日本語版発売前にかいつまんで紹介するのがメインのブログだけど、以前紹介したイスラエルの作家エトガル・ケレットの本とか、とても好きなものは日本語版が出ていても取り上げたい。 本書「翻訳できない世界のことば」(原題'Los…

インターネットだいっきらい - I Hate the Internet by Jarett Kobek

I Hate the Internet by Jarett Kobek もしカート・ヴォネガットがはてな匿名ダイアリーを書き殴ったとしたら。そんな小説が本書'I Hate the Internet'である。 トラルファマドール星人やボコノン教は出てこないけれど、かわりに、マーク・ザッカーバーグも…

【番外】坂本慎太郎「できれば愛を」と2016年の憎しみ

書評と全然関係ない番外記事。 今日(2016/7/26)の日記みたいなもの。 夜に仕事から帰宅したら、予約していた坂本慎太郎の新アルバム「できれば愛を」が届いていたので聞いた。

【番外】もしUSにフリースタイルダンジョンがあったら

書評と何の関係もない、遊びの番外エントリです。 フリースタイルダンジョンをいつもYoutubeで見ていたのですが、権利問題の関係でオフィシャルにはYoutube配信中止になってしまいました。 で、かわりに?Swayのフリースタイル動画を見ていたら、Commonがめ…

【まとめ】エトガル・ケレットと「あの素晴らしき七年」

2016/06/06追記 「あの素晴らしき七年」の訳者の秋元孝文さんがこのブログを紹介してくださいました! 秋元孝文 On the Road to Nowhere: エトガル・ケレット 『あの素晴らしき七年』 書評情報 (注)個人的な「黄色い本」3きょうだい。どれかを好きな人には…

書くための10のルール(というか隠れた真実)by エトガル・ケレット

イスラエルの作家エトガル・ケレットの自伝的エッセイ集「あの素晴らしき七年」に恋しているので、引き続き関連エントリー。 Twitterでケレットによる執筆十ヶ条という記事を紹介している方がいた(この方はケレットのエッセイのうまさを米原万理と並べてい…