FICTION & ART
技術は下手くそ。足は遅い。体も小さい。 でも、天性の視野の広さと、それに裏付けられた思考力、そして周りを巻き込む行動力がある。 サッカー漫画『アオアシ』の主人公はそんな設定のキャラクターだ。毎巻ほんとうに面白くて、最新の30巻も最高だった。単…
新潮社「Foresight」での連載「未翻訳本から読む世界」、更新されています。 通訳者は国際政治の綱の上で踊る:植田かもめ | 未翻訳本から読む世界 | 新潮社 Foresight(フォーサイト) | 会員制国際情報サイト ジャーナリストでありフリーランスの翻訳家・通…
韓国の作家チャン・リュジンの短編小説集『仕事の喜びと哀しみ』が好きだ。 以下、一部ネタバレあり。 表題作では、スタートアップ企業に勤務する女性が主人公である。そこでは英語名のファーストネームで互いを呼び合う事が推奨されている。CEOはデービッド…
ジェニー・オデルの「何もしない」(How to to nothing)を読んだ。余暇を含めた全ての時間を換金可能な経済資源として差し出す事に慣れてしまった社会を批判する本だ。カリフォルニア在住のアーティストであるオデルは、荘子や古代ギリシャのエピクロス派の…
Beautiful World, Where Are You by Sally Rooney サリー・ルーニーの新作小説"Beautiful World, Where Are You"、すごく良いタイトルだと思った。 ルーニーは1991年アイルランド生まれの女性作家で、これまでに2作の小説を発表。若者の恋愛を描いて、いわゆ…
新潮社「Foresight」での連載「未翻訳本から読む世界」、第2回が更新されました。 有料記事なので、こっちのブログにはteaser・予告編・オマケ話みたいなものを書こうと思います。 今回取り上げたのは、オマル・エル=アッカドの小説第2作"What Strange Para…
前回と、前々回に続いて、最近読んだマンガの話。 和山やまの「夢中さ、きみに。」に男子校を舞台にした連作短編が収められていて、その中に「林くん」というキャラクターが出てくる。 彼は周りから見て「よくわからない男」だ。学校の階段の数を全て数えて…
前回の記事に続いて、最近読んだマンガの話。 池辺葵「ブランチライン」の1巻を読んだ。女性ばかり4姉妹の家族を描いた物語でとても素晴らしいのだけど、この記事ではまた本筋とは関係ないところを紹介したい。 主人公姉妹のひとりがはたらく職場に後輩の若…
最近読んだいくつかのマンガについて語りたい事が溜まってきたので、ラフに連続記事にしてみようかなと思う。 まずは「チ。地球の運動について」の第4集。このマンガの主題については以下の記事で以前紹介したので省略する。 巻を重ねても相変わらず面白いの…
向田邦子ベスト・エッセイ (ちくま文庫) Spotifyのポッドキャスト番組「ホントのコイズミさん」の向田和子ゲスト回を聞いた影響で、2020年に発売された「向田邦子ベストエッセイ」を読んでいる。オリジナル編集のアンソロジーである。 最後に収められた一編…
春にして君を離れ (クリスティー文庫) アガサ・クリスティーの「春にして君を離れ」を初めて読んだら最高の小説だった。全ページ全センテンス全ワードが好きだ。ポアロは登場せず、殺人事件も起きない小説であり、発表当時はクリスティーが名前を隠して別名…
人生がゲームだとして、クソゲーをクリアするのと、よいゲームだがゲームオーバーになるのと、どちらに価値があるのだろうか。 15世紀のヨーロッパを舞台に、異端とされていた地動説を証明しようとした人々を描くマンガ「チ。ー地球の運動についてー」が、と…
※noteの個人アカウントに書いているfreestyle読書日記から転載
タトル・モリエージェンシーさんが世界の本棚からお薦めを紹介する「翻訳書ときどき洋書」への寄稿連載、更新されています。 アウシュヴィッツ生存者である心理学者のEdith Egarが人生に降りかかる困難との向き合い方を語る「The Choice」を紹介しています↓ …
タトル・モリエージェンシーさんが世界の本棚からお薦めを紹介する「翻訳書ときどき洋書」への寄稿連載、更新されています。 文明の終わりに備える「プレッパーズ」たちを取材したノンフィクションを紹介しています。コロナの前に出た本だけど急にタイムリー…
書評じゃない番外記事。 2010年代に発表された音楽から、ソロアーティストのオススメアルバムを10作品選んでみた。コロナで自宅にいる期間が増えて回顧モードなのだ。 過去に記事を書いたものはリンクを付けてある。最後に、最近の音楽でよくキーワードとし…
※noteの個人アカウントに書いているfreestyle読書日記から転載
書評じゃない番外記事。発売から既に2ヶ月近く経ったのだけど、小沢健二のアルバム『So kakkoii 宇宙』についての感想。そして、神と宗教と宇宙と超越についての話。 目次 10年前の僕らは胸をいためてオザケンなんて聴いてた 犬→LIFE→宇宙という歴史修正主義…
タトル・モリエージェンシーさんが世界の本棚からお薦めを紹介する「翻訳書ときどき洋書」への寄稿連載、更新しました。 どう見てもAmazonがモデルの超巨大企業Cloudが支配する近未来のアメリカを舞台にした小説、The Warehouseを紹介しています!ぜひどうぞ↓
劉慈欣(リウ・ツーシン)- 三体 中国語版だけでシリーズ累計2100万部、オバマ元大統領やザッカーバーグも絶賛、世界最大のSF賞と言われるヒューゴー賞を英語圏以外で書かれた作品として史上初めて受賞。アホほど話題の尽きない中国SF「三体」の日本語版発売…
当ブログいちおし、イスラエルの掌編作家エトガル・ケレットの来日特設サイトにコメントを寄せました。以下リンク先の"Comment"メニューで読めます↓
書評じゃない番外記事。 「黒澤明、すげえ!」と、たぶん世界で述べ50億番目ぐらいに思った話。 目次 MotionとEmotion 「生きる」 3つのシーン 加えられている演出
Joji - ATTENTION | A COLORS SHOW 書評じゃない番外記事。 アジア系アーティスト集団88rising所属のJojiによる"Attention"という曲の歌詞を訳してみた。上に貼った動画がとても良かったため。ベルリン拠点のYoutube音楽チャンネル"COLORS"でのパフォーマン…
この記事で言いたいこと 土のように優しく生きようとする人間にとっては、賞賛も暴力になる。 クッツェーの小説「マイケル・K」は、感情語や装飾表現を「焼き払った」文章で、個人の流転と自由を描いた傑作。 目次 2018年ベスト小説 ざっとあらすじ 描写うま…
イ・ラン(Lang Lee) - 悲しくてかっこいい人 韓国の自由で気高い魂、 シンガーソングライターのイ・ランのエッセイ集。 セカンドアルバムの「神様ごっこ」(名作!)を聴いて以来、彼女の表現世界がとても好きで、ミランダ・ジュライと並べた記事を以前に…
日本での劇場公開や動画配信は未定。でもめちゃくちゃ面白かったドキュメンタリー「エトガル・ケレット ホントの話」(Etgar Keret - Based on a true story)を紹介したい。 先に言いたいことを書いておくとこんな感じ。世の中には「悪いウソ」を使うのが上…
書評じゃない小ネタ記事。 世界で一番人口の多い「時間帯」はどのタイムゾーンかご存知だろうか。 目次 文明のタイムゾーン史観? 88risingとは ネットのギミックをブランドに変える おまけ:その他のタイムゾーン
前の記事↑からの続き。 ピュリッツァー賞作家ジュノ・ディアスのパワハラ・セクハラ疑惑(経緯は前の記事参照)に際して、政治・文化メディアのBoston ReviewがWeb上に発表した声明文を以下に勝手に訳す。
ピュリッツァー賞作家ジュノ・ディアスの絵本を紹介した前の記事↑からの派生記事。 というか、ここからが本題。 前の記事を書くときにジュノ・ディアスの近況を調べてみたら、2018年の5月に彼に対するセクハラ・パワハラ疑惑が起こっていた。その経緯は次の1…
Junot Diaz - Islandborn 本書"Islandborn"の主人公ローラが通う学校の子どもたちは、皆どこか別の場所の出身だ。 「みんながもともといた国のことを絵に描こう」 先生がそう課題を出したとき、他の生徒は色めきだったがローラは困ってしまう。生まれてすぐ…